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2022 年度 実施状況報告書

糖尿病網膜症の慢性化制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K09717
研究機関大阪大学

研究代表者

福嶋 葉子  大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任講師(常勤) (70647031)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード糖尿病網膜症 / 血管内皮細胞 / AKT / ノンコーディングRNA
研究実績の概要

本研究において、これまでにVEGF長期刺激をうけた内皮細胞において発現が上昇する長鎖ノンコーディングRNA(e-lncRNA)を同定した。そして、このe-lncRNAはAKTタンパク質のキナーゼドメインとの結合を介して、AKT活性を維持することを明らかにした。
本年度は、まずe-lncRNAの発現制御機構の解明に取り組んだ。VEGF長期刺激をうけた内皮細胞では、IL1bがe-lncRNA発現を誘導しているだけでなく、IL1Bはオートクライン作用により自身の発現を誘導することがわかった。つまり、虚血環境に長らく置かれた内皮細胞では、VEGF非依存的にIL1b-e-lncRNA-AKT持続活性というシグナル伝達経路が形成されることが明らかになった。つづいて、ヒト糖尿病網膜症に対する外科的治療で摘出される異常血管を含んだ眼内線維組織のe-lncRNAとAKTの発現および局在をin situ hybridization (RNA-scope)、免疫染色法でそれぞれ解析した。e-lncRNAは異常血管の内皮細胞の細胞質内に点状に存在し、培養細胞と同様の局在を示した。また、異常血管にはリン酸化AKTも強く発現していることが確認された。さらに、生体の血管新生におけるe-lncRNAの役割を解析可能かを検討するため、種差による機能の違いについて検証した。一般にlncRNAの遺伝子配列は種差が大きいとされており、ヒトとマウスのe-lncRNAは45%の相同性をもつ。ヒトe-lncRNAはヒト内皮細胞に過剰発現させるとAKTの活性化が誘導される一方で、マウス内皮細胞ではヒトe-lncRNAはAKT活性を誘導しない。この結果から、ヒトe-lncRNAは他の因子と協働してAKT持続活性を誘導することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定通り、e-lncRNAによるAKT持続活性の制御機構を明らかにすることができた。
ただし、ヒトe-lncRNAを過剰発現するトランスジェニックマウスの作製については、ヒト・マウス間の種差による機能の違いがあることから、作製方法の変更を余儀なくされている。これを継続するとともに、治療法開発のための代替研究として、AKT持続活性を制御する化合物スクリーニングに着手した。

今後の研究の推進方策

病的環境に特異なシグナル伝達経路であるAKT持続活性は治療標的として有効と考えられる。そこで、次年度はAKT活性を制御する低分子化合物を探索する。すでにAKT持続活性を評価可能な細胞アッセイ系の構築に着手している。

次年度使用額が生じた理由

本年度は作成した遺伝子組換えマウス解析にかかる費用を計上していたが、解析中の結果より異なる手法で遺伝子組換えマウスの作成が必要となった。そこで、この解析にかかる費用は、次年度予算として繰り越すこととした。
また、計上した学会参加のための旅費がオンライン開催となったものがあったため次年度に繰り越すことになった。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Adiponectin accumulation in the retinal vascular endothelium and its possible role in preventing early diabetic microvascular damage2022

    • 著者名/発表者名
      Sakaue Taka-aki、Fujishima Yuya、Fukushima Yoko、Tsugawa-Shimizu Yuri、Fukuda Shiro、Kita Shunbun、Nishizawa Hitoshi、Ranscht Barbara、Nishida Kohji、Maeda Norikazu、Shimomura Iichiro
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41598-022-08041-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Analysis of Progressive Neovascularization in Diabetic Retinopathy Using Widefield OCT Angiography2022

    • 著者名/発表者名
      Shiraki Akihiko、Sakimoto Susumu、Eguchi Mami、Kanai Masanori、Hara Chikako、Fukushima Yoko、Nishida Kentaro、Kawasaki Ryo、Sakaguchi Hirokazu、Nishida Kohji
    • 雑誌名

      Ophthalmology Retina

      巻: 6 ページ: 153~160

    • DOI

      10.1016/j.oret.2021.05.011

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Characteristics of choroidal neovascularization in elderly eyes with high myopia not meeting the pathologic myopia definition2022

    • 著者名/発表者名
      Sayanagi Kaori、Fujimoto Satoko、Hara Chikako、Fukushima Yoko、Kawasaki Ryo、Sato Shigeru、Sakaguchi Hirokazu、Nishida Kohji
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41598-022-18074-2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Microvascular Changes in the Cystic Lesion of Branch Retinal Vein Occlusion Imaged by Swept-Source Optical Coherence Tomography Angiography2022

    • 著者名/発表者名
      Araki Satoko、Sakimoto Susumu、Shiozaki Daiki、Ueda Chihiro、Hara Chikako、Fukushima Yoko、Sayanagi Kaori、Sakaguchi Hirokazu、Nishida Kohji
    • 雑誌名

      Biomedicine Hub

      巻: 7 ページ: 99~105

    • DOI

      10.1159/000525497

    • 査読あり
  • [学会発表] 抗VEGF薬による長期治療の功罪と今後の展望ーこれからの未熟児網膜症診療2022

    • 著者名/発表者名
      福嶋葉子
    • 学会等名
      第38回 眼循環学会シンポジウム
  • [学会発表] インストラクションコース 未熟児網膜症アップデート2022

    • 著者名/発表者名
      福嶋葉子
    • 学会等名
      第76回 日本臨床眼科学会
  • [図書] 今日の眼疾患治療指針 第4版2022

    • 著者名/発表者名
      大路 正人、後藤 浩、山田 昌和、根岸 一乃、石川 均、相原 一
    • 総ページ数
      1184
    • 出版者
      医学書院
    • ISBN
      978-4-260-04807-1

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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