研究課題
フックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)患者の体細胞における、TCF4遺伝子のCTGリピート異常(TNR)伸長の不安定性を評価した。69名のFECD患者に対してshort tandem repeat assayとtriplet repeat primed PCRで評価したところ、白血球由来ゲノムDNAでは69例中15例に50以上の異常伸長が認められた。異常伸長が見られた症例の白血球由来ゲノムDNAを用いてsmall pool PCRによって計測された平均最大TNR数は1602±1258、バリエーション数は19±15であり、両者は有意に相関していた。(R=0.84, p<0.05)。角膜内皮移植を施行した患者2例の末梢血と角膜内皮におけるTNRの最大値は、それぞれ1285、3199および26、101であった。FECD患者の末梢血においてTNR伸長が不安定であること、末梢血に比べて角膜内皮においてTNRがさらに伸長していることが示唆された。次にFECD患者におけるTNR異常伸長と角膜臨床表現型との関連を検討した。75例150眼を対象として白血球由来ゲノムDNAのTNR伸長を解析し、Scheimpflugによる角膜後方散乱値、前眼部光干渉断層計による角膜および前眼部の形態学的パラメータをTNRが50以上の異常伸長患者と50未満の患者の間で比較した。75例中16例(21%)が50以上の異常伸長を示した。性別、年齢、角膜移植歴、modified Krachmer grading、角膜後方散乱、前房形態(前房深度、隅角開大度など)は2群間に有意差は認められなかった。前房形態については、単変量混合モデルを用いても、中心角膜厚(P = 0.047)を除いて有意差は認められなかった。多変量混合モデルでは、TNR異常伸長は中心角膜厚とは有意に関連していなかった(P = 0.27)。日本人のFECD患者において、TNR異常伸長の有無による臨床表現型の差は認められなかった。
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