眼感染症のマネージメント手法を至適化するには、まず、局所の病原体を把握する、つまり、細菌を含めた各種病原体の定量PCRが有用である。次に、病巣部で真に起こっている病像を分子レベルで理解する必要がある。このために病巣の網羅的転写解析を行った。これにより、各種病態に特異的なマーカーの探索、ひいては、どのタイミングでどのような治療が必要となるのかの意思決定を支援できる。さらに病態マーカーを実際の臨床に応用するには、簡便かつ迅速に同定できる手法の確立が必要である。 まず、病原体PCR手法を用いて 単純ヘルペスウイルスの再発や増殖に寄与する因子群の同定とその寄与を評価した。また、病原体をより正確に同定する手法の確立をすすめた。これには、病巣部からの病原体PCR後の病原体sequencing手法を用いた。 一方、分子レベルで病態に応じた治療を選択するうえで、感染性角膜炎のトランスクリプトーム解析を行った。たとえば、細菌性角膜炎においては、CD3分子やgranzyme Aが最も高く発現していた。さらに分子ネットワークにおいては、インターフェロンγ、IL-6により構成される病原体誘導性サイトカインストームが重要な地位を占めていた。また、ステロイド使用が必要となる病態を代表する分子群を含めたさまざまな分子マーカーが同定できた。 平行して、これらの分子群を迅速に同定する手法として涙液のエクソソームに着目し開発を進めている。まず、涙液からエクソソームを抽出する手法の確立、さらに涙液におけるエクソソームに含まれるmiRNAの同定、さらに、涙液エクソソームの表面に発現するタンパクの網羅的解析を行った。 これらの知見をもとに感染性角膜炎の病態を迅速に把握できる手法の開発に必須となる重要な知見が得られつつある。
|