研究課題/領域番号 |
21K09725
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
戸田 宗豊 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30550727)
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研究分担者 |
山下 智子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70470250)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 角膜内皮細胞 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、培養ヒト角膜内皮細胞注入法あるいは従来型の角膜移植において、移植先微小環境における適応能を予測評価し、長期予後成績に優れる移植用ヒト角膜内皮細胞を選別する方法を確立することである。 ヒト角膜内皮細胞は培養条件下で容易に相転移(EMT、老化等)を起こし、その本来の機能を減じる、あるいは消失する。しかしながら、一部のドナー由来の細胞では、長期間の培養でも相転移を起こさず、生体内の成熟分化細胞と相同の形質を維持する。また、角膜移植においては術後の角膜内皮細胞は一般的に経年とともにその細胞密度 (ECD) が減少するが、長期にわたりECDが維持されるケースもわずかにみられる。 これまでに、従来の角膜移植術における術後の生体内 ECD と移植後残部を使用した培養角膜内皮細胞の品質との相関を調査したコホート研究において、培養環境下で相転移を起こさず高品質を維持する角膜内皮細胞は、角膜移植後の生体内での ECD 減少率が低い傾向にあることを見出した (Kitazawa K. et al. Sci Rep. 2022; 3(2):100239)。すなわち、培養環境下における低い相転移性は、生体内における細胞の健常度を反映していることが明らかとなり、ドナー間で相転移抑制能・移植先環境適応能に差異が存在し、それをin vitro の培養ヒト角膜内皮細胞を用いて評価・予測できる可能性が示された。 さらに、研究用ドナー角膜から調製した相転移抑制能の異なる凍結細胞ストックを作成した。これらを起眠し、いくつかの培養条件で培養、RNA-Seq 解析を実施した。この解析により、ヒト角膜内皮細胞の健常性に関与すると推測されるいくつかの候補遺伝子を選別できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に調製したRNAシークエンス用ライブラリ(易相転移性群と難相転移性群の2群、各群3細胞ロット(計6ロット)×8培養条件)を次世代シークエンサーで解析した結果、両群の細胞応答の差異から細胞の健常性破綻経路に関与すると推測されるいくつかの候補遺伝子(老化、細胞周期、線維化、分化等に関わる遺伝子)が選別された。 さらに、検証実験に用いるための角膜移植残部から拡大培養した角膜内皮細胞凍結保存バンクを初年度から併せて86例分作成した。 以上のように、研究計画のうち、(1) CST 評価用の培養ヒト角膜内皮細胞ストックの調製、(2)トランスクリプトーム解析による健常性破綻経路の推定、(3) 角膜移植同ドナー由来の培養細胞のバンク化(目標50例)について達成済みであり、本研究は当初の計画通りに順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に選別された候補遺伝子について個別解析を行い、これらが培養下での相転移耐性と相関するかを評価する。易相転移群と難相転移群における各遺伝子の発現量を定量PCRにより解析するとともに、フローサイトメーター、Western Blotting、ELISA 等関連タンパク質の解析も行い、健常性破綻経路の推定を試みる。 最終的に角膜移植同ドナー由来の培養細胞のバンクを用いて長期予後成績と生体内健常性維持因子の相関を解析し、移植先微小環境における適応能を予測評価できるマーカーとなりうるかを検証する。
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