研究課題
フックス角膜内皮ジストロフィ(Fuchs endothelial corneal dystrophy; FECD)は、角膜の透明性維持に不可欠である角膜内皮細胞が進行性に障害される疾患である。Guttaeと呼ばれる細胞外マトリックス(ECM)を主たる構成成分とする疣状の突起が角膜内皮と基底膜の間に形成され、光の散乱を生じることで視機能が障害される。さらに進行すると角膜内皮細胞の障害が進むことで角膜浮腫による視力障害が生じる。ECMを構成する過剰なタンパク質の合成はFECDの病態の中心とも言える一方で、「過剰なタンパク質」とは、①どのようなものであり、②角膜内皮組織のどの部位に、③病期のどの時期に産生されるのか、④遺伝的背景と関係するのかについてはほぼ不明である。そこで本研究では、FECD患者組織および正常ドナー角膜を用いてショットガン解析によるタンパク質の網羅的発現解析およびMALDI-TOF MSによる質量分析を行った。ショットガン解析によりFECD患者のguttaeを含む基底膜にのみ発現する32のタンパク質が同定された。その後のエンリッチメント解析では、FECD患者のguttaeを含む基底膜に発現するタンパク質に関して、多くのECM関連の経路との関連が認められた。免疫染色においてさらにこれらのタンパク質の発現を検証したところ、ヘモグロビンα、SRPX2、テナシン-C、ヘモグロビンγδεβがFECDでは発現しているが、非FECDでは発現していないことを確認した。MALDI-IMSが、guttaeを含む基底膜で発現する生体分子の局在の分布を明らかにできることが示された。これらはFECDの病態解明に寄与する新規の発見であった。
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Scientific Reports
巻: 27 ページ: N/A
10.1038/s41598-023-37104-1