研究実績の概要 |
視線視野計測法は,視標刺激に対する反射性のactiveな視線移動の観測に基づき行うため,自覚的応答を必要としない。今回,視線視野計測のスクリーニング評価を目的とした計測システムを考案し,その精度を検証するために,健常人を対象に計測値の信頼性を検討した。信頼性検討のため,対象は応答の精度を考慮し,矯正視力1.0以上を有する健常人30名30眼 (22.7±5.2歳)とした。視線移動の計測には視線計測装置Gazefinderを使用した。被検者には屈折矯正下でモニターに呈示される白点視標を追従させ,視線移動を計測した。白点視標の呈示プログラムは,今回独自にプログラミングを行った。追従が正確にできた場合,水平垂直15.3°,斜め21.5°(理論値)の8方向の広がりを計測することが可能である。3回の計測を行い,速やかな解析,グラフ化を目的に独自に開発をした解析ソフト (CreateChart)を用いて定量化 (実測値)を実施し,級内相関係数を求めた。視線到達の精度を示す理論値と実測値の差分は,上方-0.1±0.9°,右上方-0.6±1.0°,右方-0.2±1.0°,右下方-0.8±0.9°,下方-0.5±0.7°,左下方-0.5±0.9°,左方-0.6±0.5°,左上方-0.4±0.7°であった。各方向の差分に有意差はなく(P=0.314),誤差は約1 °前後と高い精度であった。また,3回の計測値の級内相関係数は全方向において0.6以上の信頼性係数を示し (P<0.01),再現性が得られた。そして,信頼性の高い視線視野計測システムを構築することができた。本研究の成果は,第76回 日本臨床眼科学会 学術展示優秀賞 を受賞した。そして, Kawasaki Medical Journal 48: 191-199, 2022. に受理・掲載をされた。
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