研究課題/領域番号 |
21K09734
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
吉田 茂生 久留米大学, 医学部, 教授 (50363370)
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研究分担者 |
石川 桂二郎 九州大学, 医学研究院, 助教 (00795304)
中尾 新太郎 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (50583027)
春田 雅俊 久留米大学, 医学部, 准教授 (90359802)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 糖尿病網膜症 / TelCaps |
研究実績の概要 |
目的:抗血管内皮増殖因子阻害薬(抗VEGF薬)の硝子体注射は、糖尿病黄斑浮腫(DME)患者における毛細血管瘤を減少させる。しかし、抗VEGF薬治療抵抗性の毛細血管瘤(Telangiectatic Capillaries:TelCaps)が残存していることが報告されている。本研究では、DMEにおける抗VEGF薬硝子体注射後のTelCapsの大きさの変化について検討した。 患者と方法:DME患者12例(男性7例、女性5例、平均年齢65.2±8.8歳)において、抗VEGF薬(導入期に3カ月連続投与を行った後、必要に応じて投与する)硝子体注射前と3ヵ月後にインドシアニングリーン血管造影(IA)と光干渉断層撮影(OCT)を実施した。IA画像にOCTのBスキャン画像を重ね、浮腫の黄斑部6mm径内のTelCapsの数と大きさを測定した。 結果:抗VEGF薬投与前と投与3ヶ月後では、TelCapsの数と大きさに有意な減少が見られた(それぞれP<0.05、P<0.0001)。抗VEGF薬治療後の最高矯正視力(logMAR視力)および中心窩網膜厚は有意に改善した(それぞれP<0.01およびP<0.02)。抗VEGF薬3カ月連続投与後に残ったTelCapsは、投与後に消失したTelCapsよりも治療前の時点で平均サイズが有意に大きかった(P<0.03)。 結論:本研究では、DME患者において、抗VEGF薬硝子体注射がTelCapsのサイズを縮小することが示された。IAにより検出された大きなサイズのTelCapsは,難治性DMEの有用な予測因子であり、選択的黄斑光凝固の積極的適応となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年糖尿病黄斑浮腫の重要病態として、抗VEGF薬治療抵抗性の毛細血管瘤(Telangiectatic Capillaries:TelCaps)の概念が提唱された。そこで治療の予後予測因子の可能性として抗VEGF薬治療前後にTelCapsが変化するか否かについて検証した。、Heidelberg SPECTRALIS HRA+OCTAを用いたTelCapsの検出タイミングの最適化、TelCapsの直径の計測の最適化を行った。その結果、抗VEGF薬治療後にTelCapsのサイズが有意に減少する事を初めて示す事ができた。また、大きなサイズのTelCapsほど治療後残存し難治性となる可能性が高く、予後不良の予測因子となる可能性が示唆された。したがってサイズの大きな難治性TelCapsに対してより早期から選択的黄斑光凝固治療を併用することにより、より低侵襲の糖尿病黄斑浮腫治療につながり、患者視機能予後向上につながりうると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究によりTelCapsに着目した糖尿病網膜症による治療は有効であることが示唆された。しかし、インドシアニングリーン血管造影は患者様にとって造影剤を用いた比較的侵襲的な検査である。したがって、より低侵襲に難治性のTelCapsを同定できれば、効果的な個別化治療につながることが期待される。そこでOCTA、インフラレッド、マルチカラーなど種々のイメージングモダリティを用いて難治性TelCapsを同定できるか否かについて検証していく。近年FaricimabやBrolucizumabなどの次世代型の抗VEGF薬が臨床で用いられている。これらの新薬がAfliberceptなど従来型に比べてTelCapsに対するサイズ縮小効果がより大きいか否かについても定量化していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者中尾氏が年度中に施設が移動となり、移動先の順天堂大学においてセットアップの時間が必要となり、本共同研究が行えなかったため、次年度に繰り越した。
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