研究課題/領域番号 |
21K09736
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
檜森 紀子 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (20705230)
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研究分担者 |
中澤 徹 東北大学, 医学系研究科, 教授 (30361075)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ミトコンドリア障害 / 酸化ストレス / ロテノン / 網膜神経節細胞 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアComplex I阻害剤ロテノンを使用し、酸化ストレスに脆弱なNrf2ノックアウト(KO)マウス網膜への影響を調べた。 8週齢の野生型マウスとNrf2 KOマウスにロテノン(30mg/kg)または0.5 % carboxymethyl cellulose(コントロール)を30日間経口投与し、免疫染色、網膜神経節細胞(RGC)数計測、網膜RT-PCR、グリア細胞の免疫染色を施行した。生後5-8日の野生型及びNrf2 KOマウスからミュラー細胞を調製しロテノン(3-100uM)投与下の細胞生存率と活性酸素分子種(ROS)量をalamarBlue assay、CellROX Green染色で調べた。ロテノン30uM下の神経栄養因子の遺伝子発現を時間毎にリアルタイムPCRで検討した。 野生型・Nrf2 KOマウスともロテノン投与群ではコントロールと比べ8-OHdG陽性細胞数の増加を認めたが(p=0.02, p=0.02)、RGC数では有意差を認めなかった。RT-PCRではロテノン投与/Nrf2 KOマウス群において、野生型と比較してGFAP、vimentinの発現上昇を認め(p=0.02 , p<0.01)、免疫染色ではGFAPのシグナル増強を認めた。野生型と比較しNrf2 KOマウスのミュラー細胞の生存率はロテノン存在下で有意に低く(p < 0.05)、ロテノン30、100uM下のミュラー細胞内ROSは有意に増加した(p < 0.05)。また、ロテノン投与6、24時間後のNrf2 KOマウスのミュラー細胞において神経栄養因子(BDNF、bFGF)の有意な発現上昇を認めた (p < 0.05)。 ロテノン存在下、Nrf2 KOマウスのミュラー細胞では神経栄養因子の発現が増強され、神経保護に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験環境が整っており、順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
ロテノン下でのミューラー細胞の挙動が明らかになったので、次にNrf2KOマウス、野生型マウスでin vitroでロテノン投与下の網膜神経節細胞障害の有無を検討し、神経障害への影響を検証する。 また、抗酸化作用を保持していると考えられているエストロゲンの緑内障病態へ与える影響について検討する。閉経が早いヒトは緑内障になりやすいという報告もあるため、外科的閉経モデルを野生型・Nrf2ノックアウトのメスマウスで作成する。網膜神経障害(免疫染色、網膜神経節細胞数計測、PCR)、網膜グリア細胞(免疫染色、純化培養)に与える影響、各組織(角膜、強膜、網膜)の酸化ストレスマーカー(脂質過酸化、8OHdGのELISA)、抗酸化酵素の発現(免疫染色、PCR)、コラーゲン生成・変性(PCR)の差異を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度ミューラー細胞培養実験にてミトコンドリア障害による酸化ストレス下での抗酸化能の計測に成功している。それを踏まえ、次年度は女性ホルモン添加による酸化ストレスの軽減、ミューラー細胞培養実験を行う予定である。それに伴い試薬・材料代が必要であり、次年度も使用させていただくと幸いです。
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