研究実績の概要 |
運転外来を受診した視野障害患者121名(平均年齢63.0±13.3歳)を対象に、視力検査、Humphrey視野検査(HFA24-2)、両眼開放エスターマンテスト、認知機能検査(Mini-Mental State Examination :MMSE)を行ったのち、アイトラッカー搭載ドライビングシミュレータ(DS)を施行した。HFA24-2より両眼重ね合わせ視野(IVF)を作成し、IVF上下半視野の平均網膜感度を求めた。DS時の視線の動きは、据え置き型眼球運動計測装置 Tobii Pro nano(Tobii Technology社)にて測定し、5分間の全走行中の指標の水平x/垂直y座標の標準偏差(視線水平/垂直Standard Deviation: SD)から「視線のばらつき」を求めた。DSの15場面での事故件数と、視力・視野・MMSE・視線のばらつきとの相関を調べた。 その結果、DS走行中に1.8±1.9件(平均±SD)の事故を認めた。DS事故件数は、年齢(r=0.52, P<0.0001)、MMSE(r=-0.22, P=0.025)、視野良好眼のMean Deviation(MD)( r=-0.28, P=0.0024)、視野不良眼のMD(r=-0.21, P=0.021)、エスターマンスコア(r= -0.29, P=0.0015)、上方IVF平均網膜感度(r=-0.29, P=0.0012)、下方 IVF平均網膜感度(r=-0.33, P=0.0003)、水平方向の視線のばらつき(r=-0.43, P<0.0001)と有意な相関があった。 視野障害患者では、高齢であるほど、認知機能が低下しているほど、視野障害が強いほど事故が多くなるだけでなく、水平方向の視線の動きが少ないことも事故につながるため、安全運転の指導時に注意喚起する必要がある。
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