研究課題/領域番号 |
21K09741
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松下 賢治 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (40437405)
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研究分担者 |
臼井 審一 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (20546882)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 緑内障 / 神経保護 / 高眼圧 / アストロサイト / ミューラ細胞 |
研究実績の概要 |
緑内障は眼圧というメカニカルストレスに対する視神経乳頭の応答である。近年そのストレス応答の一つとして視神経乳頭における活性化アストロサイトの初期反応が重要視されている。我々は乳頭アストロサイトを純粋単離しメカニカルストレス応答を検討する培養系で緑内障発症極初期に相当する軽度の刺激では活性化とは異なるアストロサイト応答、すなわち遷移状態が存在し短時間の高眼圧モデルでも生体で再現した。高眼圧の短時間ストレスでも網膜神経節細胞死を招くが、その応答反応として知られているアストロサイトマーカーGFAPの発現上昇は遷移状態時には生じず、GFAP、S100bは減少する。一方、神経節細胞マーカーのBrn3aは減少することは網膜神経節細胞死と合致した。また、この形態変化にはS100bが関わることを見出した。また、昨年検出した遷移状態は高眼圧眼だけでなくその反対眼にも生じた現象には、両眼間にアストロサイト応答を連鎖する媒体(サイトカインIL1β、IL6)が関わることが示された。このことからこの反応にマイクログリアが関与する可能性が示唆されている。さらに、多光子顕微鏡による眼底観察の解像度向上のためにマウス前眼部収差の補正を試みたが困難で、補償光学を用いた収差補正が必要と考えられた。また、昨年作成したミューラ細胞に多色レポーター遺伝子を発現させるGlastCRE_ERT2XBrainbowマウスを用いることで、ミューラー細胞個別の形態解析が可能となった。現在、緑内障モデルとされる高眼圧モデル、神経挫滅モデルを作成し、網膜内ミューラー細胞のストレス応答観察を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一過性高眼圧モデルでも網膜神経節細胞死を招くが、アストロサイトマーカーGFAPの発現上昇は遷移状態時には生じず、逆にGFAP、S100bは減少した。一方、神経節細胞マーカーのBrn3aは減少した。この遷移状態の形態変化にはS100bが関わることを見出し、メカニカルストレス下でS100bは細胞外に分泌されるが、ストレスに比例した増強は見られなかった。また、昨年検出した遷移状態は高眼圧眼だけでなくその反対眼にも生じた現象には、両眼間にアストロサイト応答を連鎖する媒体(サイトカインIL1β、IL6)が関わることが示された。このことからこの反応にマイクログリアが関与する可能性が示唆されている。さらに、多光子顕微鏡による眼底観察の解像度向上のためにマウス前眼部収差の補正を試みたが困難で、補償光学を用いた収差補正が必要と考えられた。また、昨年作成したミューラ細胞に多色レポーター遺伝子を発現させるGlastCRE_ERT2XBrainbowマウスを用いることで、ミューラー細胞個別の形態解析が可能となった。現在、緑内障モデルとされる高眼圧モデル、神経挫滅モデルを作成し、網膜内ミューラー細胞のストレス応答観察を開始した。以上から、本年度は計画通りの成果を上げている。
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今後の研究の推進方策 |
遷移状態におけるアストロサイトの形態変化に関わるS100bは網膜内でも発現は確認されており、負荷後の生体サンプルを抽出し、網膜内のアストロサイトマーカーや神経節細胞マーカー、アストロサイトの増殖能や細胞死マーカーの発現などを、qPCRを用いてRNA解析する。その結果を公開されている負荷サンプルによるシングルセルデータのサブ解析を用いて比較検討し、形態変化関連分子を特定しその機序を解明する。S100bと形態変化の関連性を細胞骨格マーカー(中間系フィラメント、アクチン)を用いて解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
該当年度は、コロナパンデミックの影響が残っていため、学会出張がオンラインが多く、減額となった。
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