主要病原体カテゴリー4種(細菌、真菌、単純ヘルペス(HSV)、アカントアメーバ)を判別できる前眼部スリット画像AIの開発を行った。さらに、病原体の推定が種レベルまで可能かどうかの検証に移った。このために、全国の協力施設より、新たな感染性角膜炎の画像三千枚以上をこれまで収集しデータベースの拡充を図りつつある。 一方、種レベルの同定がAIで可能かどうかをまず代表的な画像AIであるResNet-50で検証した結果、代表的な菌種においては、前眼部画像から推定が可能であることが判明した。 一方、AIモデルにおいて、いったいどのような過程で診断に至ったかを説明できることが求められつつある。このような説明可能なAI(XAI)は、臨床レベルでは十分確立されていない。そこで、所見を認識した上で診断に至る診断モデルを考案し、開発を試みた。まず、角膜潰瘍や角膜浮腫、結膜充血、前房蓄膿などの主要な所見をsegmentation AIに認識させることを試みた。正確な認識を行わせるため、所見の範囲の認識は専門医により行った結果を学習させた。これにより十分な所見の認識精度が得られたことを確認した。さらに、これらをもとに、種レベルまで同定できることを目標にAIの精度向上を図っている。さらにAIがどのような部位をもとに判定しているかの詳細な解析を行い、感染性角膜炎の診断に有用な新規所見の同定を行った。あわせて、分子病態を描出するため、代表例の病巣からRNAを抽出し、網羅的転写解析を行った。これにより、分子病態の認識手法の開発を図りつつある。 以上、病原体の推定を可能とする画像AIの構築を図りつつ、AIの説明可能性、分子病態の統合に向けて新たなステップへ開発をすすめている。
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