研究課題/領域番号 |
21K09754
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
浅田 洋輔 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (70596626)
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研究分担者 |
松田 彰 日本大学, 大学院医学研究科, 准教授 (00312348)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アレルギー性結膜炎 / ILC2 / IL-33 |
研究実績の概要 |
慢性重症アレルギー性角結膜炎は青壮年の発症が多く、生活の質の低下を招くのみならず、時に角膜の混濁・不正乱視による永続する視機能障害を引き起こす疾患である。我々の研究グループは慢性重症アレルギー性角結膜炎の病態研究とマウスモデルの樹立に注力する中で、結膜実質の脈管周囲組織におけるIL-33陽性活性化線維芽細胞が慢性重症アレルギー性角結膜炎のマウスモデルで増加していることを発見した。本研究では脈管周囲の活性化線維芽細胞がアレルギー性角結膜炎の慢性化・重症化に果たす役割を明らかにするとともに、IL-33中和抗体を用いた慢性重症アレルギー性角結膜炎治療の有効性をマウスモデルで検証することを目的としている。慢性重症アレルギー性角結膜炎の病態に結膜線維芽細胞が産生するIL-33と、それによって活性化されるILC2シグナルがどのように関連しているかを明らかにするため、IL-33中和抗体を用いた慢性アレルギー性結膜炎の抑制をおこなった。中和抗体の点眼で一定の治療効果は得られることが判明したが、統計学的に有意な差が得られる程の治療効果が見られなかったために、昨年度に静脈内投与の実験も加えたが手技的に難度が高く、繰り返しの抗体投与には向かないことが判明したため、本年度は中和抗体を腹腔内投与に切り替えて実験を施行した。また、治療効果判定のためには治療前のアレルギー性角結膜炎の程度がある程度強い必要があるため、本年度は新規の慢性アレルギー性角結膜炎モデルの導入をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
結膜下組織の脈管(血管、リンパ管)周囲のIL-33陽性線維芽細胞(Adventitial stromal cell)が、ILC2細胞の分化増殖をサポートして、アレルギー性角結膜炎の慢性化・重症化に重要な役割を果たしているのではないかとの仮説の検証のため、以下の3つの目標を設定して研究を遂行している。 ①慢性アレルギー性結膜炎マウスモデルにおけるIL-33陽性線維芽細胞とILC2の共局在を明らかにする ②IL-33欠損マウスを用いた慢性アレルギー性結膜炎モデル、IL-33中和抗体投与下の慢性アレルギー性結膜炎モデルマウスを用いてILC2の存在と活性化状態を検証 ③ヒトのAKC/VKC組織におけるIL-33陽性線維芽細胞(Adventitial stromal cell)の同定とsingle cell RNA-seq解析 昨年度までに①、②に関してある程度のデータを得ていたが、②のIL-33の中和抗体投与実験で、有意な治療効果が得られなかったため、本年度は投与法の変更と新規の重症アトピー性角結膜炎モデル(FADSマウス)を佐賀大学・出原賢治先生との共同研究で導入し、IL-33中和抗体投与実験を開始した。 また①の再検証としてFADSマウスを用いて、結膜における脈管周囲のPDGFR-alpha+IL-33+の線維芽細胞との時間的・空間的共局在を免疫組織染色の手法で明らかにしてゆく。また結果の検証のため、FADSマウスの結膜をFACS解析し、ILC2細胞(Linage- ST2+)とPDGFR-alpha+IL-33+繊維芽細胞の局在を検証している。③に関して、本年度はヒト由来の臨床サンプルが得られなかったため、Visum空間的遺伝子発現解析(10xgenomics社)プラットフォームを用いた、組織切片上の単一細胞におけるRNA-seq解析を施行するため、次年度以降の請求を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では脈管周囲の活性化線維芽細胞がアレルギー性角結膜炎の慢性化・重症化に果たす役割を明らかにするとともに、IL-33中和抗体を用いた慢性重症アレルギー性角結膜炎治療の有効性をマウスモデルで検証することを目的としている。慢性重症アレルギー性角結膜炎の病態に結膜線維芽細胞が産生するIL-33と、それによって活性化されるILC2シグナルがどのように関連しているかを明らかにするため、IL-33中和抗体を用いた慢性アレルギー性結膜炎の抑制をおこなった。中和抗体の点眼で一定の治療効果は得られることが判明したが、統計学的に有意な差が得られる程の治療効果が見られなかったために、昨年度に静脈内投与の実験も加えたが手技的に難度が高く、繰り返しの抗体投与には向かないことが判明したため、本年度は中和抗体を腹腔内投与に切り替えて実験を施行した。また、治療効果判定のためには治療前のアレルギー性角結膜炎がある程度強い必要があるため、本年度は新規の慢性アレルギー性角結膜炎モデルの導入をおこなった。来年度はこの新規の慢性アレルギー各結膜炎モデルを使用し検証を行っていく予定である。また本年度はヒト由来の臨床サンプルが得られなかったため、Visum空間的遺伝子発現解析(10xgenomics社)プラットフォームを用いた、組織切片上の単一細胞におけるRNA-seq解析を施行するため、次年度以降の請求を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は投与法の変更と新規の重症アトピー性角結膜炎モデル(FADSマウス)を佐賀大学・出原賢治先生との共同研究で導入し、IL-33中和抗体投与実験を開始した。来年度はこのアレルギー性結膜炎モデルを使用し検証予定である。またもともと使用予定であったさらに新たに採取したAKC/VKC組織を用いてVisum空間的遺伝子発現解析(10xgenomics社)プラットフォームを用いて、組織切片上の単一細胞におけるRNA-seq解析を施行し、IL-33陽性脈管周囲線維芽細胞とILC2細胞を実際のヒト臨床サンプルで同定し、その局在を含めた情報を解析予定であり、次年度以降の請求を予定している。
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