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2021 年度 実施状況報告書

筋容積損失治療を指向したスキャホールドフリー・生体模倣立体筋組織体の創出

研究課題

研究課題/領域番号 21K09766
研究機関岡山大学

研究代表者

北口 陽平  岡山大学, 大学病院, 医員 (40897188)

研究分担者 森脇 健司  弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (50707213)
岩井 良輔  岡山理科大学, フロンティア理工学研究所, 講師 (60611481)
太田 智之  岡山大学, 大学病院, 医員 (90869140)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード筋再生 / 自己凝集化 / 三次元培養 / スキャフォールドフリー / 筋容積損失 / 組織工学 / 再生医療 / 培養筋組織
研究実績の概要

本研究では独自の細胞自己凝集化技術を筋芽細胞に適応することにより足場素材を用いずに板状~バンド状の厚みを有した培養筋組織を作成し、筋再生の可能性を検討することを目的としている。
R3年度ではまずマウス筋芽細胞株(C2C12)を用いバンド状の凝集塊を作成する方法論の開発を行った。具体的にはまず角丸長方形のシリコーン製の枠を培養皿に貼付し内部にシリコーン製の小柱を2つ設置した。次いでこのシリコーン枠内に細胞自己凝集を引き起こすポリマー液をコーティングし、同部にC2C12をコンフルエントに播種し培養を行うと細胞はいったんコーティング状に接着し細胞シートを形成した後に辺縁より剥離・凝集をはじめ、シリコーン製の小柱に引っかかる形でバンド状の凝集塊を形成した。
この凝集塊をin vitro条件で筋管細胞に分化させるためにDMEM high glucoseに2% horse serumを含んだ培地で培養を行ったが、組織の収縮力が強いためか凝集塊は破綻してしまった。凝集塊の支持性を向上させるためにC2C12に他の細胞腫を混合し同様の手順でバンド状凝集塊を作成したところ、間葉系幹細胞を含有させる割合が多いほど凝集塊の支持性は上昇し、形態を維持しやすいことが示された。
また出来上がったバンド状凝集塊の生体内での生着、成熟過程を模倣するために生体内で誘導したシリコーン被膜へ移植するex vivo実験を行った。被膜上に移植したバンド状凝集塊は30分程度で被膜に接着し、その後2週間の分化培養を経て部分的に筋管形成をすることが確認できた。このことから作成した筋芽細胞バンドは生体内に移植した際に移植部にとどまり、分化、成熟する能力を持つことが示唆された。
今後は生体内への移植を行うことによりin vivoにおける筋組織再生への寄与について検討を進めていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

細胞自己凝集化技術(CAT)を用いてC2C12のバンド状凝集塊を作成に成功した。しかしながら筋芽細胞単独の凝集塊では組織の収縮力が強く、形状を維持したまま分化培養を継続することは困難であった。メカニカルストレスをかけながら培養を行うことでより強靭で伸縮性のある組織へと分化させることを検討しているが適切な培養器の作製に難渋している。一方で間葉系幹細胞との共培養により組織体の支持性を向上し形状の破綻しにくいモデルを作成することに成功した。
また一方で生体内に移植した際の組織再生に寄与する因子として成熟した筋管細胞は必須ではなく、衛星細胞や筋芽細胞およびそれらが産生する因子が重要であると考えられるため、バンド状凝集塊を培養下で成熟させるのではなく、未熟な細胞凝集塊として移植することも検討している。前段階として行ったC2C12のバンド状凝集塊を生体由来のコラーゲンシート上に移植し培養を行ったex vivo実験では凝集塊が短時間で被膜に生着し、その後分化していく様子が観察された。筋管形成に関してはHEで多核の紡錘形細胞が形成されていることや抗αアクチニン抗体による免疫染色にて確認している。
以上よりR3年度に予定していた①CATを用いた板状組織体の開発および②その解析について計画と多少の変更はあったがおおむね期待した結果を得ることができたと考える。

今後の研究の推進方策

R3年度まででCATを用いてC2C12のバンド状凝集塊の作成方法の基礎を開発しており、今後はこれらを小動物の筋容積損失(VML)モデルに移植し、筋組織の再生の程度やメカニズムの解析を行う予定である。VMLモデルは免疫不全マウスもしくはラットの前脛骨筋を部分切除することで作成し、移植後の筋容積の変化の記録および組織解析を行う。
また一方でより成熟した培養筋組織を作成するための試みも引き続き行う予定であり、3Dプリンターやシリコーン形成を応用することで専用の培養器作成を行う。また筋芽細胞に血管内皮細胞や神経細胞を混合することでより生態を模した高機能型の培養筋組織の作製にも取り組む。このような複合的な組織体をVMLモデルに移植することにより血管新生、神経再生を伴う効率的な筋組織の再生が得られることを期待する。
出来上がった筋組織および移植後の組織は、HE染色や各種免疫染色(Hoeschst、Phalloidin、Pax7、Tublin β Ⅲ、von Willebrand factorなど)を行い、筋組織の配向性や衛星細胞の分布、筋管細胞、神経、血管の形成、移植組織の生着、壊死、筋組織の量などの評価を行う。移植により得られた知見を培養筋組織作成にフィードバックすることでより効果的な筋再生を目指す。

次年度使用額が生じた理由

R3年度においては組織解析に利用する抗体や動物実験費用が想定より少なかったが、次年度では新規での抗体購入や動物飼育費などで支出が増加する見込みである。
またR3年度は新型コロナウイルス感染症の流行のため共同研究者との対面ミーティングの機会を設けられなかったため旅費の使用がなかった。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 形成外科領域への応用を目指したスキャフォールドフリー三次元培養軟骨の開発2022

    • 著者名/発表者名
      太田智之、高尾知佳、岩井良輔、山田大祐、北口陽平、木股敬裕、宝田剛志
    • 学会等名
      第34回日本軟骨代謝学会

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公開日: 2022-12-28  

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