最終年度に実施した研究として、リンパ浮腫患者のTCR解析を行いリンパ浮腫患者に共通してみられるTCRを模索した。バルクのリンパ球解析であり本研究ではリンパ浮腫患者に共通のTCRはみられなかった。本研究をまとめて論文化しiScienceに掲載した。 研究期間全体としてリンパ浮腫とリンパ浮腫治療後(LVA術後)、健常者で末梢血中のT細胞の表現型とTCRのRepertoire解析(Simpson's index)を行った。リンパ浮腫群とLVA術後群および健常者群のCD4陽性T細胞上のPD-1発現量(%)はそれぞれ30.7と27.1および19.9であり、リンパ浮腫群は健常者群と比較して有意に上昇しており(p < 0.01)、リンパ浮腫群と比較してLVA術後群で有意に低下していた(p = 0.03)。CD4陽性PD-1陽性T細胞上のIFN-γはそれぞれ30.1と24.7および20.6であり、リンパ浮腫群は健常者群と比較して有意に上昇しており(p = 0.04)、リンパ浮腫群と比較してLVA術後群で有意に低下していた(p = 0.03)。Simpson’s indexはそれぞれ44.1と200.5および151.0であり、リンパ浮腫群は健常者群と比較して有意に低下しており(p = 0.03)、リンパ浮腫群と比較してLVA術後群で有意に上昇していた(p = 0.02)。 リンパ浮腫群では健常者群と比較して末梢血T細胞の疲弊マーカーの発現量が多く、炎症性サイトカイン産生能が亢進し、T細胞受容体の多様性が低下していた。しかしLVAによりT細胞上の疲弊因子の発現が減少し、TCRの多様性が回復したことからリンパ浮腫において免疫能が改善されることが示唆された。また、炎症性サイトカインを産生するT細胞亜群がLVA後に減少していたことより、リンパ浮腫における炎症をLVAによって抑制できる可能性が示唆された。
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