研究実績の概要 |
2次性リンパ浮腫における内因性トロンボキサンの関与とその制御機構を明らかにする目的で本研究を遂行した。実験動物として雄性野生型マウス(WT)とトロンボキサン受容体(TP)ノックアウトマウス(TP-/-マウス)を用い、リンパ浮腫として尾部リンパ浮腫モデルを作成した。さらにマクロファージ特異的TPノックアウトマウス(m TP-/-マウス)と対照マウス(Cont)を用いた検討もおこなった。処置後の尾部径は増大し、WTマウスよりTP-/-マウスで浮腫が遷延した。またリンパ管新生、リンパ管新生促進因子、リンパ管内皮マーカーはWTマウスよりTP-/-マウスで減少した。集積マクロファージはWTマウスよりTP-/-マウスで増加した。マクロファージTP受容体シグナルの関与をさらに調べるためにm TP-/-マウスとContにリンパ浮腫モデルを作成したところ、尾部浮腫はm TP-/-マウスで著明に認められかつ遷延した。またリンパ管新生、リンパ管新生促進因子、リンパ管内皮マーカーはContマウスよりmTP-/-マウスで減少した。マクロファージ集積はContマウスよりmTP-/-マウスで増加した。マクロファージ表現形式はContマウスでは抗炎症性マクロファージタイプが、mTP-/-マウスでは炎症性マクロファージタイプが増加していた。またマクロファージからリンパ管新生促進因子VEGF-C,VEGF-D産生がみられた。リンパ浮腫部のリンパ管機能を蛍光色素を注入することで評価するとContマウスよりもmTP-/-マウスでは、リンパ管内の蛍光色素強度は低下し、リンパ管外への色素漏出が増加した。以上の結果から、マウス尾部浮腫モデルにおいて、内因性トロンボキサンはマクロファージのTP受容体に作用して機能的な新生リンパ管の形成を促進させることで、リンパ浮腫軽減に関与することが示唆された。
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