研究課題/領域番号 |
21K09779
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
村上 史浩 東京医科大学, 医学部, 客員研究員 (40866662)
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研究分担者 |
善本 隆之 東京医科大学, 医学部, 教授 (80202406)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯髄幹細胞 / 不死化 / 細胞培養上清 / 褥瘡モデルマウス |
研究実績の概要 |
2021年度は、まず、ヒト脱落乳歯歯髄幹細胞(SHED)にヒトテロメラーゼ逆転写酵素(h-TERT)と増殖に重要なパピローマウイルス(HPV16)のE6とE7、細胞生存や周期に重要なBMI1をレトロウイルス感染により遺伝子導入して不死化した細胞株の性質を、プライマリーの歯髄幹細胞と比較検討を行った。FACS解析よりどちらの細胞も、間葉系細胞としての典型的な発現パターン(CD73、DC90、CD105陽性、CD11b、CD14、CD19、CD34、CD45、CD40、CD80、CD86、HLA-DR陰性)を有していた。細胞増殖能については、血清存在下でもプライマリー細胞に比べ不死化したSHED細胞株の方が高く、培養上清を回収する際に用いる無血清培地では、さらに、不死したSHED細胞株の方が高かった。次に、無血清培地で72時間培養した上清を回収し、ELISAを用いてHGF、VEGF、インスリン様成長因子結合蛋白質(IGFBP)-4、TGF-b1について産生量を比較すると、不死化したSHED細胞株の方がどのサイトカインについても数倍から10倍近く産生量が高かった。さらに、RayBiotech社のQuantibody Human Cytokine Antibody Array 1000を用いて80種類のサイトカインや増殖因子について、発現を比較すると、上位には、IGFBP-4,6,2やメタロプロテイナーゼ組織阻害剤-1,2、次に、VEGFとHGFが続くことが分かった。興味深いことに、不死化した細胞は、神経細胞への分化条件で培養すると、プライマリー細胞より、早く強く神経細胞へ分化することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度で、培養上清の生化学的基礎的解析は、ほぼ終了したと思われるので、ほぼ計画の予定通り進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度: 褥瘡モデルマウスでの検討 ① 褥瘡モデルマウスの治療効果:褥瘡は、マウス背中の毛を剃った後、2つの円形磁石で皮膚を挟み12時間後に、磁石を外して一過性虚血再灌流障害を誘導するモデルを用いる。100 ulずつ左右の磁石を置いた周りに連日皮内注射する。次に、褥瘡形成のピークを過ぎた6日頃から同様に投与し、その治療効果を検討する。② 褥瘡モデルマウスでの作用機序:上記の網羅解析の中から可能性が高い分子について、その特異的中和抗体を用いて、免疫沈降反応によりその分子を除去したCMを調製する。次に、ELISAによりその分子が除去されていることを確認後、褥瘡モデルマウスに投与し、その治療効果を比較検討し関与を明らかにする。 2023年度:虚血再灌流障害の作用機序 ① VEGFによる血管障害の軽減:潰瘍形成がピークの6日後に、虚血時の血管修復に重要な血管内皮細胞のマーカーCD31やペリサイトのマーカーであるNG2やPDGFRβの発現が、SHED-CM投与で回復するか免疫組織学的解析を行う。次に、虚血時には、ペリサイトが血管内皮細胞に分化することが報告されているので、in vitroの培養系でヒトペリサイト細胞に不死化SHED-CMを加えて、血管内皮細胞に分化誘導しないか調べる。② HGFによるROS産生の抑制:低酸素状態を検出するPimonidazoleに対する抗体やDNA障害のマーカーである8-OHdGに対する抗体を用いた免疫組織学的解析や、酸化ストレスに関連する因子の皮膚局所での発現をリアルタイムRT-PCRにより調べ、不死化SHED-CM投与により低酸素状態や酸化ストレスが軽減されるか調べる。次に、HUVECまたはNIH3T3細胞を低酸素条件下で培養24時間後再酸素負荷し、不死化SHED-CMがROS産生や細胞死誘導を抑制するかやHGFの関与についても調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数をピッタリ合わすのが難しかったため。残金は,2022年度の消耗品費に加える。
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