研究課題/領域番号 |
21K09779
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
村上 史浩 東京医科大学, 医学部, 客員研究員 (40866662)
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研究分担者 |
善本 隆之 東京医科大学, 医学部, 教授 (80202406)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯髄幹細胞 / 不死化 / 細胞培養上清 / 褥瘡モデルマウス |
研究実績の概要 |
2022年度は、褥瘡モデルマウスを用いて不死化した乳歯由来歯髄幹細胞の培養上清(SHED-CM)の潰瘍形成の抑制効果とその作用機序について検討を行った。 ① 褥瘡モデルマウスの治療効果:褥瘡モデルは、マウス背中の毛を剃った後、2つの円形磁石で皮膚を12時間挟み、その後、磁石を外してさらに12時間放置し、一過性虚血再灌流障害を誘導し潰瘍を形成させるモデルを用いた。虚血再灌流処置の5日後をピークに潰瘍が形成され、その程度を、経時的に皮膚潰瘍形成の様子を写真をとり、ImageJを用いて面積を算出し、比較検討した。無血清の培地で培養し回収したSHED-CM、および、そのコントロールとして無血清培地を、100 μlずつ左右の磁石を置いた周りに連日皮内注射すると、SHED-CM投与により潰瘍形成が有意に抑制された。次に、褥瘡形成のピークを過ぎた6日から投与してもその治療効果が見られた。 ② 褥瘡モデルマウスでの作用機序:SHED-CMの網羅的サイトカイン発現解析より発現の高かった肝細胞増殖因子(HGF)と血管内皮細胞増殖因子(VEGF)について、それぞれの特異的抗体を用いて免疫除去すると、コントロール抗体処理に比べ、有意に潰瘍形成抑制効果が減弱化した。この時、HGFの免疫除去により参加ストレスマーカー8-OHdG(8-hydroxy-2’-deoxyguanosine)に対する抗体を用いた皮膚局所の免疫染色により酸化されたDNAの割合が軽減し、さらに、血管内皮細胞のマーカーCD31に対する抗体による免疫染色により新生血管の割合が低下していた。 以上の結果より、SHED-CMは、虚血再灌流障害により誘導される潰瘍形成を、HGFとVEGFを介して抑制する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SHED-CM投与による褥瘡の潰瘍形成の抑制効果とその作用機序が明らかになってきたので、ほぼ計画の予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、不死化した乳歯由来歯髄幹細胞の培養上清(SHED-CM)投与による虚血再灌流障害による褥瘡の潰瘍形成抑制効果における肝細胞増殖因子(HGF)と血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の関与と作用機序について、さらに、in vitroの細胞培養系を用いて検討する。 ① SHED-CM中のROS産生の抑制効果とVEGFおよびHGFの関与の検討:マウス線維芽細胞株NIH3T3を低酸素条件下(1%O2)1%FBS含有培地でSHED-CMの有無で48時間培養後、通常の酸素下(21%O2)で6時間培養し、細胞内の活性酸素種(ROS)の産生増強をDCFDA Cellular ROS Detection Assay Kit (abcam)で測定する。次に、HGFおよびVEGFに対する特異的抗体を用いて免疫除去したSHED-CMとそのコントロール抗体処理したSHED-CMを用いて同様に行い、ROS産生抑制効果とその効果へのHGFおよびVEGFの関与を明らかにする。 ②SHED-CMの血管新生増強効果とVEGFおよびHGFの関与の検討:ヒト臍帯血由来血管内皮細胞(HUVEC)を用いた管腔形成アッセイにより、SHED-CMの血管新生の増強効果を調べる。次に、SHED-CMの血管新生増強効果が見られれば、VEGFまたは HGFに対する特異的抗体を用いて免疫除去したSHED-CMと、コントロール抗体処理したSHED-CMを比べ、血管新生増強効果が減弱するか検討し、SHED-CMの血管新生増強効果とその効果へのHGFおよびVEGFの関与を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用金額の端数を合わせることができなかったため、次年度使用が生じた。残金は、次年度の消耗品代に加えて使用する計画である。
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