糖尿病生潰瘍の多くは難治性であり、特に治療抵抗性のある下腿潰瘍は最終的に切断に至ることが多く下肢切断後の5年生存率は35%前後と予後不良である。皮膚潰瘍治療の1つとして再生医療に大きな期待が寄せられているが、糖尿病では表皮幹細胞の機能や再生能力が低下するという問題がある。申請者は健常ヒト末梢血から単離した単核球(MNC)を独自開発した生体外増幅培養法を適用することで、表皮幹細胞マーカーの発現(MNC-EK細胞調整)及び創傷移植へ供する方法を考案した。本研究では糖尿病皮膚潰瘍治療のため、創傷における表皮幹細胞の供給源・再生抑制の機序解明を目的とする。 初年度は健常者および糖尿病患者から採取したMNCからMNC-EK細胞を調整する方法を確立した。表皮幹細胞特性評価を分化誘導コロニーアッセイで検証すると、MNC-EK細胞は表皮細胞へと分化することを明らかにした。 次年度はMNC-EK細胞を免疫不全糖尿病性潰瘍モデルマウスへ移植し創傷治癒効果を検証した。その結果、細胞移植群では移植後早期から潰瘍縮小し、14日目の縮小率はControl群(PBS)が20%程度に対しMNC-EK細胞移植群は90%近くまで治癒を認めた。更に潰瘍組織解析ではkeratin陽性細胞を多く検出した。 最終年度は、創傷皮膚の細胞再生ソースを解明するためGPFマウスと健常マウスでparabiosisモデルを作成し分析を行った。健常マウスに皮膚潰瘍を作成し皮膚再生過程の組織を解析すると、再生部位にGFPマウス由来Keratin陽性細胞の集積を認め、末梢血由来細胞が皮膚再生に必要な細胞を供給していることが示唆された。 皮膚再生には末梢血由来細胞が関与し、糖尿病患者由来末梢血液細胞から再生能力の高い細胞を培養できる方法を確立したことにより、皮膚潰瘍治療における革新的皮膚再生治療法へ期待が高まった。
|