本研究の目的は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)添加自家多血小板血漿(PRP)の皮下投与により、組織の陥凹変形が改善されるのか、また充填されたものは結果として本当に再生された脂肪組織なのかどうか、そして美容目的とした眼瞼陥凹修正に対する治療手段として安全といえるのかどうかを動物モデルを用いて検証することである。 前年度までに実施した内容であるが、6週齢雌BALB/cヌードマウス両側背部にヒト皮膚皮下脂肪組織近似モデルを作成し、作成後4週目にbFGF添加PRP群、PRP単独投与群、bFGF単独投与群、コントロール群に分類し、移植脂肪の肉眼的評価などの検証は終えた。今年度の成果であるが、①組織学的検査としてH-E染色による脂肪生着率の評価、AZAN染色による移植脂肪の線維化評価、および免疫染色として抗perilipin抗体を用いた生存脂肪細胞の評価、抗CD31抗体を用いた新生血管数の評価、さらに脂肪細胞の分化過程に発現するペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ(PPARγ)を定量評価し、各群における脂肪組織への影響を組織学的・免疫組織学的に検証を行った。更にbFGFの濃度により3群に分け、濃度依存性に組織学的に変化があるかどうかについても検証した。その結果、①bFGF添加PRP群においては濃度依存的に組織の線維化が増加した、②血管新生はbFGF濃度依存的に高かった、③PPARγの発現はbFGFのベル型濃度依存的に多く認めた。以上のことから、PRPに添加するbFGの濃度を低濃度から中濃度にすることにより脂肪分化を促進し、bGF濃度を高くすることで組織の線維化を助長することが示唆された。
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