研究課題/領域番号 |
21K09805
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
清水 一彦 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (90385394)
|
研究分担者 |
菊田 幸子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10367089)
北原 秀治 東京女子医科大学, 医学部, 特任准教授 (40510235)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ポドプラニン / 炎症 / リンパ管 |
研究実績の概要 |
リンパ管マーカーの一つであるポドプラニンは1回膜貫通型の糖タンパク質である。ポドプラニンの機能としては、血小板上に存在するCLEC-2のリガンドとして血小板を凝集させることが知られており、リンパ管の発生過程で静脈とリンパ管の分離に関与する可能性が報告されている。我々は現在までに創傷治癒モデルな どを用いてリンパ管再生機構を明らかにしてきたが、その際、炎症の場においてポドプラニンを発現する間質細胞が多数出現することを見出した。また、関節リウマチのような慢性炎症においてもポドプラニンの発現が上昇するとの報告もある。しかし間質の細胞が炎症の場でポドプラニンを発現させる意義については不明な点が多い。そこで本研究においては接触性皮膚炎モデルなど種々の炎症モデルを用いて、炎症の場に現れるポドプラニン陽性細胞の性状を形態学的・分子生 物学的に追求し、この細胞が炎症にどのような役割を果たしているのかを明らかにすることを目的とする。そのために、①皮膚炎モデルを用いたポドプラニン陽性細胞の動態調査、②ポドプラニン中和抗体を用いたポドプラニン陽性細胞の機能解析、③他の炎症モデルと皮膚炎モデルとの比較検討を3カ年かけて行い、ポドプラニンを制御することで炎症をコントロールすることが出来るのかを検討する予定で研究を進めている。 昨年度に新たな炎症モデルを作製することを目的として伸張性筋収縮を繰り返すことで遅発性筋痛モデルラットを考案し、本年度はこのモデルを検討したが、コントロールと比較してポドプラニンの発現に差は見られなかった。そこで、本年度は新たに薬剤性筋損傷モデルを考案した。その結果、筋再生時においてポドプラニンの発現が上昇する傾向が見られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度も新型コロナウイルス感染防止対策の為、教育業務を含めた他業務に多くの時間を取られてしまった。また、本業務における各種委員会での業務が例年以上となり本業務のエフォートが多くなってしまった。さらに自身が所属移動することとなり、次年度業務の引き継ぎ準備に多くの時間を取られてしまい、本研究を行う時間が減少してしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
研究期間内ではまず、炎症の場に出現するPDPN陽性細胞の本態を正確に把握するために、接触性皮膚炎モデルを用いて以下の事項を遂行する。①炎症の場で急激に表れるPDPN陽性細胞の同定:多重免疫染色法を用いてPDPNを発現している細胞がどのようなマーカーを持っているのかをさらに追及し、その正体を明らかにする(清水・北原・菊田担当)。②新たな炎症モデルの構築:2022年度に新たに考案した遅発性筋痛モデルにおいてPDPNの発現上昇は現在のところ確認できていない。これが骨格筋特有のものなのか、炎症の程度の問題なのかを調べるために、引き続き遅発性筋痛モデルを作製するとともに、骨格筋損傷モデルを作製して比較検討することで、骨格筋における炎症モデルでのPDPNの発現解析を行う。 最終年度となる2024度は、今までに構築した種々のモデルをより詳細に検討して、炎症の場に現れるPDPN陽性細胞の性状を考察し、国際的な学術誌に発表する準備を行うと共に、各部位毎におけるPDPNの発現や機能の違いを検討する準備を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は多くの委員会活動などの本業務のエフォートが増えてしまい、研究に割く時間が大幅に減少してしまった。さらに、自身の所属移動の準備や引き継ぎ業務などで研究を行う時間を増やすことが困難となった。2023年度までの未使用額については、動物の購入と研究に必要となる薬品、消耗品の経費として使用する。 研究分担者の菊田・北原に関しても、新型コロナウイルス蔓延防止措置に伴い本業務が増加してしまい、分担研究に割く時間が減少した。未使用額については主に研究消耗品の購入に充てる予定である。
|