研究課題
頭蓋・顔面領域の組織変形に対する自家軟骨組織移植には、軟骨採取に伴う高度侵襲や量的制約などの問題がある。新規治療法としてヒト弾性軟骨細胞を用いた再生療法に対する期待が高まっているが、現在まで試験管内において、そのまま移植することができる軟骨組織を再構成することはできていない。我々はヒト耳介軟骨膜に存在する弾性軟骨前駆細胞を同定し、低速回転浮遊培養技術にて試験管内で足場材料を用いずに軟骨組織を再構成することに成功したが、この軟骨組織は組織学的にやや未成熟であった。我々はこの問題を解決するために、高速回転培養法を考案し試験管内で成熟軟骨組織を再構成することを試みている。低速回転浮遊培養法と高速回転培養法は全く別の基盤技術である。低速回転浮遊培養法は一般的に疑似微小重力培養と呼ばれ、細胞にかかるGは0.01g以下である。一方、高速回転培養法の至適回転数を含めた詳細は未確定である。高速回転培養の研究は世界的にも報告はなく明らかなEBMは確立されていない。高速回転培養における条件や手技などの基盤技術を確立し日本発の手技として世界に発信することが期待される。本研究の目的は、ヒト軟骨前駆・軟骨細胞由来のヒト軟骨組織を再構成するために高速回転培養法の細胞操作基盤技術を開発することである。本年度は、試作した高速回転装置を用いて再構成された軟骨フィルム・塊が安定的に再構築されることを確認しながら、軟骨フィルムを免疫不全ラットの膝関節に移植した。膝関節軟骨を除去した群をコントロールとして、移植群は膝関節軟骨を除去した後に、再構成された軟骨フィルムを膝関節に縫合固定して移植した。移植2か月後に膝関節の可動性を確認した結果、コントロール群は全く可動性がなかったが、移植群は20-30°の可動性を得ていた。