研究課題/領域番号 |
21K09815
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
服部 高子 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (00228488)
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研究分担者 |
久保田 聡 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (90221936)
西田 崇 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (30322233)
高江洲 かずみ (河田かずみ) 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (10457228)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CCN family member 3 / 加齢 / 老化 / SASP / 細胞周期停止因子 / p21プロモータ活性 / 変形性関節症 / CCN3tgマウス |
研究実績の概要 |
1.胎生期から出生後37週(8.6ヶ月齢)までの様々な時期のマウス肋軟骨組織から初代培養軟骨細胞を単離し、遺伝子発現の変化を調べると、CCN family member 3 (CCN3) mRNAとともに細胞周期停止因子p21, p53、senescence-associated secretory phenotype (SASP)因子であるIL-6, IL-8 mRNAの発現レベルと軟骨細胞採取時のマウスの加齢状態との間に強い正の相関があることがわかった。また、CCN3抗体を用いた1ヶ月から7ヶ月齢のマウス膝関節の免疫染色でも、加齢とともに強い染色性が観察された。2.ヒト患者由来初代培養軟骨細胞、ラット培養軟骨細胞株RCSに酸化ストレスとしてH2O2を添加し、人工的に誘発した老化軟骨細胞においてCCN3 mRNAの有意な発現上昇とともに、p21,p53の発現上昇、肥大軟骨マーカーである10型コラーゲン、マトリックスメタロプロテナーゼ13、アグリカン分解酵素ADAMTS5 mRNAの発現誘導が認められ、CCN3、P53の誘導は蛋白レベルでも確かめられた。この時、senescence-associated (SA)-β galactosidaseの活性化も確認された。3.RCS細胞にCCN3を発現ベクターの導入により過剰発現させるとp21プロモータ活性が上昇した。4.2週齢マウス膝関節より単離された初代培養軟骨細胞およびRCS細胞に組換えCCN3蛋白を添加するとp21, p53 mRNAが誘導された。これらのことからCCN3の発現上昇によっても細胞周期停止因子の誘導による老化が誘発されることが明らかとなった。5.軟骨組織特異的にCCN3を発現するトランスジェニックマウスの関節軟骨では、早期に関節変性が誘導され、このマウスの肋軟骨組織から単離した初代培養軟骨細胞では細胞周期停止因子群、SASP因子群の発現が上昇していた。6.ヒト患者由来関節組織から単離した初代培養軟骨細胞においてCCN3, p21,p53 mRNAの発現レベルと年齢との間に強い正の相関が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理由)老化軟骨細胞におけるCCN3の発現誘導に加え、CCN3の過剰発現による軟骨細胞老化現象を明らかにした本実績はすでに国際科学雑誌に投稿し、掲載された。今年度はさらに若年より老年期の初代培養関節軟骨から得たRNAを用いてRNA-seqを行い、様々な因子の発現変動をすでに検出しており、遺伝子発現の変動と老化との関連、CCN3発現変動との関連について現在さらに解析中である。また、当初予定はしていなかったが、体の関節によって変形性股関節症の病態が異なることから、変形性股関節症を用いてその発症機構についても解明中である。
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今後の研究の推進方策 |
老化軟骨細胞におけるCCN3の発現を上昇させる因子の検索として、高齢および若年ヒトから得られた軟骨細胞からRNAを抽出しRNA-Seq解析に よりCCN3の発現を上昇させると期待される因子の同定を行う。標的としては、転写調節因子のみでなく、エピジェネティックな遺伝子発現制御 を行う因子を含める。 CCN3による新たな軟骨細胞老化経路の解明として、CCN3発現が直接影響を及ぼす分子あるいは経路の特定我々が既に作製している軟骨組織特異的CCN3過剰発現マウスの軟骨細胞より採取したRN Aを用いたマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行う。 これらの因子の遺伝子改変マウスをCRISPR-Cas9システムを用いて作製し、表現型を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に繰越金が発生したが、令和4年度にRNA-Seqなどの解析費を計上する計画があり、そちらに充当するため。
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