研究課題
変形性股関節症(OA)の発症要因としてあげられる加齢、荷重およびCCN3の発現と軟骨組織の変性との関連を、大腿骨頭軟骨組織を用いて解析することを目的として以下の結果を得た。①OAによる人工関節置換手術(OA群)と大腿骨頭骨折(正常群)によって得られた患者由来の大腿骨頭から荷重部と非荷重部を分取し、遺伝子発現を組織より直接、また初代培養軟骨細胞より調べたところ、荷重、非荷重に関わらずOA群でOA関連因子やCCN3 mRNAの有意な上昇を認めた。組織より直接回収したRNA, 初代培養した細胞より回収したRNA共に荷重部、非荷重部の間に遺伝子発現の有意差は認められなかった。②RNAを回収した領域と隣接した領域を組織解析用に回収し、軟骨組織の変性をSafranin O-Mankin scoreで評価した。OA群と正常群の比較には、年齢に有意差がないことを確認し、それぞれの群の中で年齢とMankin scoreの相関がないことを確認した。③CCN3およびOAマーカーとなるaggrecan neo-epitopeの免疫染色により組織への蓄積を比較したところ、OA群で荷重部、非加重部ともに著しい陽性細胞の増加を確認した。④CCN3遺伝子の発現とその近傍組織のMankin scoreに正の相関が観察された。正常群でもCCN3発現の高い組織のMankin Scoreは比較的高かった。⑤軟骨組織にCCN3を過剰発現させたトランスジェニックマウス(Tg)を作製し、股関節および弱荷重関節として肩関節のX線解析、培養軟骨細胞のRNA解析、組織の免疫染色を行なったところ、CCN3 Tgの大腿骨頭および肩関節では早期より関節変性を認め、大腿骨頭初代培養軟骨細胞で、Ccn3とOA関連マーカーの有意な遺伝子発現上昇を観察し、aggrecan neo-epitopeの組織への蓄積を免疫染色で観察した。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究は本来計画した実験に加えて、CCN3の過剰発現が変形性関節症の発症や重症化に関与しているか言及したもので、当研究の加齢とCCN3の発現上昇の関連性に加え、CCN3の発現と変形性股関節症の有無、さらには重症度との有意な相関があること、一方でOAの発症と年齢やメカニカルストレスとには相関がないことを明らかにし、国際情報誌に発信した。さらには、既にRNA-Seqを行なって網羅的遺伝発現の解析を行なっており、本来計画していた研究の進捗にも遅れがないと考えられることから、当初の計画以上に進展していると判断した。
2023年度においてもRNA-Seqの解析結果をもとに加齢によって誘導される因子とCCN3の発現との検証、および変形性関節症の発症とCCN3の発現との検証を引き続き進めていく予定である。得られた研究成果は時間をおかず国際情報誌に発表する予定である。
当該年度は剰余金が発生したが、次年度にマウスの解析、RNA-Seqの解析を予定しているため、次年度に繰り越すこととした。
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