研究課題/領域番号 |
21K09816
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
河野 尚平 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (00868391)
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研究分担者 |
新飯田 俊平 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 研究推進基盤センター, センター長 (10137630)
吉子 裕二 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (20263709)
南崎 朋子 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (30452593) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 血管石灰化 / 慢性腎不全 / イノシトールリン酸 / オミクス |
研究実績の概要 |
腎性骨症に代表される骨ミネラル代謝異常がみられる病態においては、骨量・骨質の低下とは対照的に、軟部組織の石灰化が惹起される。血管異所性石灰化は慢性腎不全患者において頻発し、予後不良因子となる。血管石灰化は骨芽細胞形成と共通のメカニズムと軟部組織に特有のメカニズムを有すと想定されており、骨形成を損なうことなく血管石灰化を抑制するためには、血管平滑筋に特有の石灰化メカニズムを解明することが必須である。 イノシトール6リン酸(IP6)はハイドロキシアパタイト結晶に結合し、その成長を阻害することから血管石灰化治療薬として期待されているが、ハイドロキシアパタイト成長阻害を作用機序とすると硬組織の骨化をも阻害してしまう危険性が否定できない。IP6は細胞膜透過性は低いが、飲作用によりその一部が細胞内に取り込まれることが知られている。 我々が新規に開発した膜透過型IP6(IP6-AM)は石灰化を阻害することを実証した。またIP6は骨芽細胞前駆細胞株KUSA-A1の石灰化を阻害したが、IP6-AMはその石灰化を抑制しなかった。さらに細胞内IP6代謝酵素の遺伝子発現を解析した結果、MOVASではIP6リン酸化酵素群が高発現している一方、KUSA-A1ではIP6脱リン酸化酵素が高発現しており、それぞれの細胞において細胞内IP6代謝が異なることが示唆された。MOVASの石灰化誘導2-3日で平滑筋マーカー遺伝子の低下と石灰化関連遺伝子の増加が確認されたので、石灰化誘導後3日のRNAサンプルを作製した。トランスクリプトーム解析の結果、石灰化誘導によって発現増大する遺伝子として375遺伝子が同定された。それらの遺伝子の中で、IP6による抑制を受けた遺伝子が199種、IP6-AMによる抑制を受けた遺伝子が195種であった。IP6-AMでのみ抑制させる遺伝子として16種類の遺伝子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランスクリプトーム解析の結果、IP6-AMでのみ発現増加が阻害される16種類の遺伝子を同定することが出来た。それらの遺伝について機能解析を進めることで、IP6-AMによる石灰化抑制機序の解明につながると考える。
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今後の研究の推進方策 |
同定された16種類の遺伝子について、ノックアウト或いはノックダウンしたMOVASを作製し、石灰化への影響を評価する。さらに、IP6リン酸化酵素あるいは脱リン酸化酵素のノックアウト、ノックダウンMOVAS細胞を用いて、石灰化抑制作用を有するIP6代謝産物の同定を目指す。
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