研究課題/領域番号 |
21K09818
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
實松 敬介 九州大学, 歯学研究院, 講師 (70567502)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 味覚 / 味覚受容体 |
研究実績の概要 |
全身の様々な臓器に発現する味覚受容体は、体内のエネルギーおよび化学受容センサーとして生体恒常性の維持や生体防御に寄与する。これらのシステムの破綻は、生活習慣病やがんなどの病態と関連する可能性があり、その基礎として、味覚受容体とリガンドとの結合特性および受容体生理・病態機能を解明することが必要不可欠である。これまで受容体とリガンドの静的な結合形態に着目されてきたが、結合後の動的相互作用に関してその多くは謎であった。本年度は、味受容体の動的活性化メカニズムを明らかにするために、甘味受容体サブユニットTAS1R3の膜貫通領域とアロステリックモジュレーター複合体を脂質膜に浮かべ、イオンおよび水を配置した生体膜分子モデルを構築し、分子動力学シミュレーションを行った。 その結果、甘味抑制物質ギムネマ酸は、500 nsの間、ヒトTAS1R3膜貫通領域と結合し続ける予測結果を得た。一方でマウスTas1r3膜貫通領域と結合させた初期モデルでは、ギムネマ酸が20 ns以内でマウスTas1r3膜貫通領域から外れることが予測され、ギムネマ酸とマウス甘味受容体は相互作用しないことが明らかになった。この結果は、ヒトの甘味を抑制し、マウスの甘味を抑制しないギムネマ酸の種特異的感受性を再現しているものと想定された。このことから、本システムが、味覚アロステリックモジュレーターとTAS1R3膜貫通領域の相互作用において、種間を含めた感受性の解析に有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TAS1R3膜貫通領域と味覚アロステリックモジュレーターとの相互作用において種間の感受性を含めた動的相互作用の予測に成功しており、おおむね計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
分子動力学法を用いた分子シミュレーションを用いて、複数のアロステリックモジュレーターと味覚受容体の相互作用における予測構造比較から、味覚受容体の動的な活性化・不活性化機構におけるその分子メカニズムの解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 消耗品が安く購入でき節約できたため。 (使用計画) 概ね順調に進んでいるので適宜執行する。
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