研究課題/領域番号 |
21K09823
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
二藤 彰 鶴見大学, 歯学部, 教授 (00240747)
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研究分担者 |
出野 尚 鶴見大学, 歯学部, 助教 (40435699)
江面 陽一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (50333456)
中島 和久 鶴見大学, 歯学部, 講師 (90252692)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 分化 / Line1 / レトロトランスポゾン / 軟骨細胞 / 間葉系細胞 |
研究実績の概要 |
Line1は、哺乳類ゲノムの遺伝子内あるいは遺伝子間に存在するレトロトランスポゾンである。Line1転写産物は生殖細胞において発現が高く認められるが、初期発生以降の発生・分化においての発現ならびにその機能についてはほとんど解っていない。本研究では間葉系細胞株から骨格系細胞への分化過程を用いて、まずLine1遺伝子群の発現の変化を解析した。なおLine1遺伝子群は、これまでに同定した異なる遺伝子とLine1の部分配列がfusionの形で転写される遺伝子である。しかもそれらはすべて異なる染色体上に存在する。間葉系幹細胞C1、ST2、および 10T1/2細胞、肢芽由来初代培養細胞、頭蓋冠由来初代骨芽細胞を用い、それぞれの分化モデルにおいてLine1領域以外ならびにLine1を含む部分のプライマーを設計しLine1遺伝子群の遺伝子発現を解析した。C1細胞は培養条件を変えることで、軟骨細胞、脂肪細胞、骨芽細胞へ細胞分化する。5種類のLine1遺伝子群が全て発現し、しかもどれもが軟骨細胞に分化する条件で最も高い発現を示した。その際Line1領域以外ならびにLine1を含む領域どちらも同様の発現形式を示した。一方肢芽由来初代培養細胞はcell aggregates を形成することで軟骨分化形質を発現するが、その分化初期において、それらの転写産物が高い値を示し、より成熟すると発現が低下することが5つの遺伝子群において同様に見られることを観察した。この解析を別の間葉系細胞にも広げつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではLine1遺伝子群の骨格系分化過程における発現と機能を明らかにすることを目的としている。その発現についての解析を未分化細胞株C1細胞と初代培養細胞について行った。これまでの予備実験と同様に、異なるゲノムlocusに存在するLine1遺伝子群が、同様の発現パターンと発現変動を示すことを観察した。同様の解析を別の間葉系細胞にも広げつつあり、まずは間葉系細胞普遍的に見られる現象か明らかにするつもりである。従って、発現解析については概ね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今回、Line1遺伝子群の発現が分化条件によって異なり、また分化成熟に伴い変動することを未分化細胞株と初代培養細胞で観察した。これらは、調べた遺伝子群で同様に観察された。この解析を別の間葉系細胞にも広げつつあり、間葉系細胞で普遍的に起こる現象か調べる。一方でLine1遺伝子群の発現の制御が特定の分子によって行われているか否かを、これまでの予備実験に基づいて同定したいくつかの分子を用いて調べる。さらに最近の報告でthe human silencing hub (HUSH) complexを構成するタンパクMPP8 と TASOR8ならびに HUSH と結合する MORC2などが Line1遺伝子の発現を制御することがヒトの細胞株で示されていること(nature 2018, 2020)などから、それらの分子が、間葉系細胞でのLine1遺伝子群の発現のどのような影響を与えるか調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議と国内学会に出席する予定であったが、コロナ禍の影響もあり、本年度はon siteでの参加をとりやめ、すべてリモート参加にしたため費用が少なくて済み、次年度使用額が生じた。本年度は、国際会議と国内学会にon siteでの参加を予定しており、その参加費と旅費等に使用する予定である
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