研究課題/領域番号 |
21K09824
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
納富 拓也 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (70542249)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 破骨細胞 / 力学的刺激 |
研究実績の概要 |
骨中力学的刺激伝達機構の研究は、力学的刺激応答性の明確な骨芽細胞を中心に発展しており、骨吸収を担う破骨細胞では、ほとんど検討されていない。特に、破骨細胞分化と力学的刺激について、その影響は刺激条件次第で正反対の結果(分化促進もしくは抑制)となる。これは、破骨細胞の力学的刺激応答性に力学的閾値(Mechano-threshold)が存在することを示す。本計画では、破骨細胞分化方向を決定する力学的閾値を仮定して、それを土台とする力学的刺激記憶機構(Mechano-memory:力学的刺激終了後、長期に渡り細胞内シグナル伝達機構が活性化され続ける)の同定と解明に挑む。 本年度では、引き続き得られた力学的閾値に基づいて、その再現性とシグナル伝達機構の重要分子について検討を進めた。長期間(7日間以上)の力学的刺激後にERK比率(リン酸化ERK/全ERK)が増加していることを背景として、グルタミン酸受容体(NMDA受容体)を標的分子の一つとして検討した。NMDA受容体の可逆的阻害薬を伸展刺激時に添加すると、長期伸展刺激後のERK比率増加が認められなかった。NR1の遺伝子欠損細胞を作成したが、細胞の増殖が低下して、実験に用いることが難しくなり、実験条件を検討中である。ただし、NR1欠損細胞では、TRAP活性減少条件下(力学的閾値以上の伸展条件)において、力学的刺激による破骨細胞分化抑制効果が確認されなかった。これは、以前、RAW細胞および骨髄由来細胞の破骨細胞を用いた検討で、阻害薬を用いた結果と同様である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
力学的閾値の条件スクリーニングは、再検証を含めて実施しているが、再現性がとれてきており、確証の高い力学的閾値の条件が判明してきている。また、CRISPR/CAS9による関連分子を欠損したRAW細胞は作成して、それを用いる条件検討を行っている。それとともに、ウェスタンブロッティングによるERK比率の同定をTRAP活性測定とともに実施している。
|
今後の研究の推進方策 |
仮定した力学的刺激閾値の条件を用いて実験を進めていく。破骨細胞分化との関連性については、引き続きTRAP activityを指標として検証する。標的分子については、CRISPR/CAS9による遺伝子欠損細胞を作成しているが、充分な量ができていないため、引き続き実施していく。作成済みの遺伝子欠損細胞では、遺伝子欠損の検証をリアルタイムPCRにてスクリーニングする。マウスを用いた実験については、野生型マウスに、細胞レベルでの閾値条件と類似した負荷をかけて、生体内での閾値の存在を検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
複数回、力学的刺激装置の不具合が生じたため、予定していた実験回数を実施できなかった。この実験減少に応じて、生化学・分子生物学実験に関する消耗品費の減少が生じた。
|