苦味受容味細胞に選択的にトレーサー(WGA-DsRed)を発現するトランスジェニックマウスにおいて、橋結合腕傍核の後方medial側と前方external lateral側に局在するWGA-DsRedを受け取る苦味経路ニューロンに関して、発現分子を免疫組織化学的に検出し、ニューロン種を比較した。前方external lateral側に局在する苦味経路ニューロンの19%はCGRPを発し、22%はsubstance Pを発現することが観察された。後方medial側の苦味経路ニューロンからはCGRP陽性細胞・substance P陽性細胞はほぼ観察されなかった。後方medial側と前方external lateral側に局在する苦味経路ニューロンでは、ニューロン種に差異があることが示唆された。同トランスジェニックマウスにおいて、扁桃体領域では、味細胞から移行したWGA-DsRedを受け取る苦味経路ニューロンは扁桃体内側核に集積していた。扁桃体内側核の苦味経路ニューロンについて、味覚嫌悪学習獲得の前後および味覚嫌悪学習の消去過程において、味覚条件刺激(口腔内サッカリン刺激)により活性化されるニューロンの割合に変化が生じるかを最初期遺伝子Zif268の発現検出により精査した。扁桃体内側核の前方背側、前方腹側、後方背側の苦味経路ニューロンにおいては、味覚嫌悪学習獲得前に比較し学習獲得後に味覚条件刺激で活性化されるニューロンの割合が増加し、消去記憶の獲得後にもその増加割合が維持された。一方で、扁桃体内側核の後方腹側の苦味経路ニューロンにおいては、味覚嫌悪学習獲得の前後および消去記憶獲得後において、味覚条件刺激で活性化されるニューロンの割合に差異が観察されなかった。扁桃体内側核の一部のニューロンは味覚嫌悪学習獲得の前後で味覚条件刺激に対する反応性を変化させることが示唆された。
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