研究課題/領域番号 |
21K09830
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
松原 琢磨 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (00423137)
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研究分担者 |
角田 佳充 九州大学, 農学研究院, 教授 (00314360)
永野 健一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (60834348)
中富 千尋 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (80878273)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 軟骨 / 骨形成 |
研究実績の概要 |
脊椎骨端骨幹端異形成-関節弛緩症(SEMDJL2) は常染色体優性遺伝疾患であり、低身長、脱臼を伴う関節弛緩症、四肢の不整合、脊椎変位をおこす骨格異形成を特徴とする。その症状は骨・軟骨の低形成に起因するものと考えられる。SEMDJL2の責任遺伝子としてキネシンモータータンパク質Kif22が報告されており、Kif22の一塩基が変異することによりKif22の機能不全が起きていると考えられている。しかしながら、Kif22の骨・軟骨における機能は全く明らかにされていない。今年度はまず、各臓器・組織よりmRNAを採取し、Kif22の局在を検討した。その結果、Kif22は骨・軟骨組織に多く発現していた。SEMDJL2は関節弛緩などの症状を呈していることから、Kif22は軟骨で作用していることが考えられた。そこで、マウス脛骨を用いてKif22の発現を免疫組織化学染色により検索したところ、Kif22は軟骨成長板の増殖層の細胞に発現していた。これらの結果はKif22が増殖層軟骨細胞で何らかの機能を果たしていることを示唆している。 まず、in vitroにおいてKif22の軟骨における役割を検討するために軟骨細胞前駆細胞株ATDC5に対し、ATDC5細胞にKif22に対するshRNA (shKif22)を導入し、Kif22の発現を抑制した。WST-8法とKi67の免疫染色により細胞増殖を検討した結果、shKif22群の細胞増殖能は対照群に比べて有意に減少していた。また、TUNEL法、LDHの測定と切断型Caspase 3の免疫染色によりアポトーシスについて検討した結果、shKif22群と対照群でアポトーシスを起こしている細胞数に有意差を認めなかった。以上より、Kif22は軟骨の成長を担う増殖層軟骨に強く発現し、さらに軟骨の増殖を制御している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はまず、各臓器・組織よりmRNAを採取し、Kif22の局在を検討した。その結果、Kif22は骨・軟骨組織に多く発現していた。SEMDJL2は関節弛緩などの症状を呈していることから、Kif22は軟骨で作用していることが考えられた。そこで、マウス脛骨を用いてKif22の発現を免疫組織化学染色により検索したところ、Kif22は軟骨成長板の増殖層の細胞に発現していた。これらの結果はKif22が増殖層軟骨細胞で何らかの機能を果たしていることを示唆している。 次に、次にATDC5細胞にKif22に対するshRNA (shKif22)を導入し、Kif22の発現を抑制した。WST-8法とKi67の免疫染色により細胞増殖を検討した結果、shKif22群の細胞増殖能は対照群に比べて有意に減少していた。また、TUNEL法、LDHの測定と切断型Caspase 3の免疫染色によりアポトーシスについて検討した結果、shKif22群と対照群でアポトーシスを起こしている細胞数に有意差を認めなかった。以上より、Kif22は軟骨の成長を担う増殖層軟骨に強く発現し、さらに軟骨の増殖を制御している可能性が示された。 また、Kif22の重要な機能を検討するために機能ドメインであるモータードメイン、DNA結合ドメイン、微小管結合ドメインを欠失したタンパク質を発現するcDNAベクターを作成した。 さらに、in vivoでのKif22の機能を検討するために、Kif22遺伝子変異マウスの作成に取り掛かり、少数の遺伝子変異マウスを得た。今後は遺伝子変異マウスを繁殖させ、解析をおこなう。 これまでのところ、特に予定した研究計画通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
Kif22の欠損により細胞増殖が抑制され、軟骨細胞分化も抑制される。つまり、Kif22は細胞増殖および細胞分化両面で軟骨形成を制御していることが示唆された。今後は、Kif22の機能を検討するために、機能ドメインを欠失した変異体を用いて研究を行う。In vitroにおいてKif22変異体をATDC5に過剰発現させ、細胞増殖や軟骨細胞分化について検討を行う。また、この状態ではATDC5には内在性のKif22が存在するので、変異体の効果が表れない可能性が考えられる。そこで、Kif22の発現をshRNAで抑制しつつ、変異体を遺伝子導入する。さらに、可能であればヒトのSEMDJL2の病態解明を目指し、SEMDJL2で同定されている遺伝子変異したKif22のcDNAを作成し、ATDC5における機能を検討する。 また、in vivoでのKif22の機能を検討するために作成したKif22変異マウスの解析をおこなう。Kif22変異マウスは現在のところ、ホモマウスが生まれてこない。Kif22が細胞分裂に必須であるため、発生しないからであると考える。そこで、Kif22のヘテロマウスを解析する。具体的には8週令のマウス脛骨をマイクロCT解析および骨形態計測により骨・軟骨に異常がないかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在のコロナウイルス・ウクライナ情勢による生産遅延・配送遅延のため、納品まで時間のかかる試薬・消耗品があり、未納品の試薬・消耗品が数点ある。本年度では未納品の試薬・消耗品が到着し、予定通り研究が遂行できると考えている。
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