研究課題/領域番号 |
21K09832
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
大津 圭史 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (60509066)
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研究分担者 |
原田 英光 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (70271210)
池崎 晶二郎 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (00849276)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 成熟期エナメル芽細胞 / LPA / RhoA / 細胞極性 / 細胞接着 / リン脂質 / 歯 / エナメル質 |
研究実績の概要 |
成熟期エナメル芽細胞は、pH調節やミネラルの輸送、タンパクの分解吸収を行うことでエナメル質の石灰化を担う一方、その異常は低石灰型エナメル質形成不全を引き起こす。リゾホスファチジン酸(LPA)は、細胞膜の主要成分であるリン脂質から合成されるリゾリン脂質メディエーターで、組織特異的に発現する受容体 (LPA1~6) を介し、さまざまな生理的機能を有する。哺乳類では細胞内外の複数の代謝経路で常時LPA が産生・分解されており、その代謝異常が癌の悪性化、動脈硬化や線維症などの誘因と考えられているが、歯の発生・疾患との関連はまったく不明である。本研究は、エナメル質石灰化機構の全容解明を目指し、成熟期エナメル芽細胞におけるLPA-LPA6シグナルの役割を解明する。そして、この破綻による成熟期エナメル芽細胞への影響とエナメル質形成不全発症との関連を明らかにすることを目的とする。本年度はマウス切歯におけるLPA6とLPA合成酵素(ATX, PA-PlA1a)の発現を免疫組織化学にて解析し, LPA6, ATX, PA-PLA1aとも成熟期エナメル芽細胞に特異的に強く発現することがわかった。さらに全身性LPA6ノックアウトマウスの切歯を解析したところ、成熟エナメル芽細胞で形態・極性の異常と嚢胞様構造物の形成が見られ、活性化型RhoA, E-cadherinやZO-1の発現が低下していた。さらにin vitroの解析からLPA-LPA6-RhoAシグナルがF-actinなどの細胞骨格を介して成熟期エナメル芽細胞の細胞接着、細胞極性の形成に関わっていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は当初の予定通り、歯におけるLPA6やLPA合成酵素の発現パターンを明らかにすることができた。またLPA6ノックアウトマウスを入手してその組織解析からエナメル芽細胞の異常を発見することができた。また培養エナメル芽細胞を使ってLPA6シグナルの下流とその機能を明らかにした。このように本年度の研究は当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はLPA6ノックアウトマウスフェノタイプのさらなる詳細な解析、LPAーLPA6シグナルにおけるRhoA活性化調節機構、RhoAシグナルの下流因子についての解析を進めていく。また同時に、LPA6シグナル関連の遺伝子異常を持つ患者においてエナメル質形成不全が見られるか、データベースや文献を検索し、LPA6異常とエナメル質形成不全症、そのほかの歯の形成異常、硬組織形成異常の関連を示すものがないか探索する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS/MS)、オッミックス解析の実験が行えなかったため、次年度使用額が生じた。これらの実験は2022年度に行う予定であり、そのための費用として次年度使用額と翌年度分の助成金を合わせて使用していく予定である。
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