研究実績の概要 |
これまでに, 口腔扁平上皮癌の癌-非癌界面における蛋白質網羅的解析により, 癌界面部組織に特異的に増加した蛋白質である ladinin-1 (LAD1) が癌細胞の平面遊走と垂直遊走に相反的な制御を行っている可能性が見出されていることに加え, 免疫蛍光染色を用いた解析から, LAD1 抑制細胞における細胞形態変化と, vimentin 陽性細胞の有意な増加, E-cadherin の細胞膜上からの有意な減少および細胞質内陽性像の有意な増加を認めたことから, 上皮間葉転換 (EMT) 様表現型の表出に関わっている可能性が考えられていた. また, EMT 関連遺伝子の発現変動を LAD1 発現抑制下で検討すると, LAD1 発現を抑制した口腔扁平上皮癌培養細胞株 HSC-2 および HSC-4 で, WNT5A 遺伝子の有意な発現増加が認められたことから, WNT pathway のなかでも, 特に EMT と細胞平面極性への関連が知られる膜貫通タンパクである ROR2 の関連性を検討した. LAD1 の発現抑制下での ROR2 遺伝子発現は, 特に HSC-4 で WNT5A 発現と連動性がみられたことから, LAD1 の発現変動に伴う細胞遊走極性と, EMT 様表現型の発現に, ROR2 の関連性が示唆され, 現在, 同じく siRNA 法での ROR2 発現抑制下での LAD1 および EMT に関連した vimentin・E-cadherin の発現変動, また LAD1・ROR2 の共発現抑制の系を検討中である.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの ROR2 の検討では, 口腔扁平上皮癌における LAD1 発現変動との関連性は, 限定的である可能性も考えられており, 今後は, より多面的な分子の検討とともに, 網羅的な遺伝子発現解析・タンパク質発現解析も必要になる可能性があることから, 現在, 実験系の確立を試みている.
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