昨年度から引きつづいて大腸がん患者の唾液と大腸がん組織から分離したF. nucleatumのゲノムシークエンスを行っている。今年度、アセンブリ結果の詳細な解析から本菌のゲノムアセンブリにはこれまでに使用していたCanu (Genome Res. (2017) 27(5):722-736.)よりもFlye (Nat Biotechnol. (2019) 37(5):540-546.)を使う方が正しい結果が得られていることが明らかになった。具体的には複数の菌株で見られたゲノム内の配列の重複がアセンブラーを変更することで大幅に改善することが確認できた。 改めて決定したゲノム情報を用いて、全ての大腸がん分離株が保有する一方で唾液分離株には認められない遺伝子、すなわち“大腸がんのF. nucleatum”に特徴的なマーカーとして利用できそうな候補遺伝子のリストを得た。 同候補遺伝子群の中から、真に大腸がんのF. nucleatumに特徴的な遺伝子を特定していくために、大腸がん患者および健常者の糞便メタゲノムデータを既報から収集し、マッピングによる同候補遺伝子の検出頻度を確認した。比較対象とした健常者の糞便中に占めるF. nucleatumの検出率がそもそもかなり低いという問題があるが、大腸がん患者の糞便メタゲノム中において同候補遺伝子群のより高頻度な検出が確認できた。 この結果を用いて、今後さらに候補遺伝子群の中から大腸がんのF. nucleatumに特異的なマーカー遺伝子を絞り込むとともに同定に繋げていきたいと考えている。
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