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2021 年度 実施状況報告書

骨内微小環境下における歯原性上皮の特異的分化および細胞老化が腫瘍発生に及ぼす影響

研究課題

研究課題/領域番号 21K09852
研究機関東北大学

研究代表者

熊本 裕行  東北大学, 歯学研究科, 教授 (70215028)

研究分担者 齋藤 悠  東北大学, 歯学研究科, 助教 (00824450)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード歯原性腫瘍 / 腫瘍発生 / 細胞分化 / 細胞老化
研究実績の概要

骨内微小環境下における歯原性上皮の増殖や分化の指標となると考えられる、細胞周期関連分子について免疫組織化学的に検索した。Cdt1はG1期、gemininはS・G2・M期、γ-H2A.Xは細胞周期から逸脱した老化細胞に、発現することが知られている。

1. 方法:エナメル上皮腫(濾胞型、叢状型)と対照の歯嚢(歯堤上皮)を用い、Cdt1・geminin・γ-H2A.Xの発現・局在について、免疫組織化学により解析した。
2. 結果:Cdt1・geminin・γ-H2A.Xは、正常および腫瘍性の歯原性上皮細胞の核に発現がみられた。これらの発現は、歯堤上皮に比べてエナメル上皮腫で高かった。エナメル上皮腫でのCdt1の発現は、多くの細胞にみられ、gemininの発現は、腫瘍胞巣辺縁部の細胞の一部に認められた。濾胞型と叢状型での発現に、あきらかな差異はみられなかった。エネメル上皮腫でのγ-H2A.Xの発現は、腫瘍胞巣中央部のごく限られた細胞に認められた。濾胞型での発現に比べ叢状型での発現は、低い傾向を示した。
3. 考察:細胞周期関連分子が歯原性上皮で確認でき、骨内微小環境における歯原性上皮細胞の増殖や分化に反映されることが示唆された。これらの分子の発現は正常組織に比べ腫瘍組織で高く、病変において細胞の動態が活性化されていることが示唆され、歯原性上皮の腫瘍化・骨内進展に関わる可能性が示された。今後さらに、これらの組織における細胞周期の制御分子や細胞老化の関連分子の状況についての検討をしたいと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

骨内微小環境における歯原性上皮の増殖・分化に影響を及ぼすと考えられる因子を検索することができ、これらにより細胞周期や細胞老化の状況が歯原性上皮の腫瘍化に関わる可能性が示唆され、興味深い結果と考えられる。

今後の研究の推進方策

骨内微小環境での歯原性腫瘍の分化または増殖に影響を与えると考えられる細胞老化関連分子のSIRTsや特異的分化因子のEpiprofin・AmeloD、幹細胞関連分子のLGR5について、免疫組織化学を主とした検索を進め、ウエスタンブロット法やRT-PCR法での確認も考えている。腫瘍間質に関しては、vimentinおよびα-smooth muscle actinに対する抗体を用いて免疫染色を行い、筋線維芽細胞を同定しその局在および程度について、また、CD68, CD163, CD204に対する抗体を用いて免疫染色を行い、M1・M2マクロファージの同定を行いその局在や比率について検討している。また、腫瘍発生や腫瘍細胞分化に関わる分子のターゲットシークエンスによる網羅的解析についても検討を進めている。これらにより、上皮性歯原性腫瘍の骨内微小環境との相互作用と分化・増殖の転写調節の関連について解析を進める。

次年度使用額が生じた理由

研究はおおむね順調に進展しているが、請求額より若干の剰余金が発生したため、上記の方針で継続する次年度の研究に使用したいと考えている。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Immunohistochemical expression levels of cyclin D1 and CREPT reflect the course and prognosis in oral precancerous lesions and squamous cell carcinoma2022

    • 著者名/発表者名
      Siril Y.J.、Kouketsu A.、Saito H.、Takahashi T.、Kumamoto H.
    • 雑誌名

      International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery

      巻: 51 ページ: 27~32

    • DOI

      10.1016/j.ijom.2021.03.012

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] The accuracy of ultrasound and magnetic resonance imaging for estimating thickness of oral tongue squamous cell carcinoma and influence of biopsy on those findings2022

    • 著者名/発表者名
      Nogami Shinnosuke、Yamauchi Kensuke、Kitamura Jun、Miyashita Hitoshi、Kojima Ikuho、Kouketsu Atsumu、Furuuchi Toshi、Iikubo Masahiro、Kumamoto Hiroyuki、Takahashi Tetsu
    • 雑誌名

      Oral Science International

      巻: 19 ページ: 24~30

    • DOI

      10.1002/osi2.1108

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Glandular odontogenic cyst in mandible: a case report and literature review2022

    • 著者名/発表者名
      Odashima K Nogami S Kitamura J Iwama R Yanagisawa Y Kajita T Miyashita H Ymauchi K Kumamoto H Takahashi T
    • 雑誌名

      J Oral Maxillofac Surg Med Pathol

      巻: 34 ページ: in press

    • DOI

      10.1016/j.ajoms.2021.11.006

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Comparison of different diagnostic imaging techniques for the detection of bone invasion in oral cancers2021

    • 著者名/発表者名
      Kouketsu A Miyashita H Kojima I Sakamoto M Murata T Mori S Nogami S Yamauchi K Nagai H Kumamoto H Takahashi T
    • 雑誌名

      Oral Oncol

      巻: 120 ページ: 105453

    • DOI

      10.1016/j.oraloncology.2021.105453

    • 査読あり
  • [雑誌論文] In vivo behaviors of highly flexible paper consisting of ultralong hydroxyapatite nanowires2021

    • 著者名/発表者名
      Kashiwada H Shimizu Y Sano Y Yamauchi K Hong G Kumamoto H Unuma H Zhu YJ
    • 雑誌名

      J Biomed Mater Res Part B Appl Biomater

      巻: 109 ページ: 1911-1921

    • DOI

      10.1002/jbm.b.34819

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 歯原性腫瘍の病理診断2022

    • 著者名/発表者名
      熊本裕行
    • 学会等名
      令和3年度熊本県がん診療連携拠点病院機能強化事業がん診断部会講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] エナメル上皮腫における未分化能持続に関連する因子に関する研究2021

    • 著者名/発表者名
      黒田佳奈子 纐纈衆 齋藤悠 熊本裕行 髙橋哲
    • 学会等名
      第66回日本口腔外科学会総会
  • [学会発表] 口腔癌における骨髄由来抑制系細胞および形質細胞様樹状細胞に関する臨床病理学的研究2021

    • 著者名/発表者名
      纐纈衆 髙橋哲 熊本裕行
    • 学会等名
      第39回日本口腔腫瘍学会総会
  • [図書] 新口腔病理学 第3版2021

    • 著者名/発表者名
      熊本裕行(下野正基 高田隆 田沼順一 豊澤悟 編)
    • 総ページ数
      364
    • 出版者
      医歯薬出版
    • ISBN
      978-4-263-45859-4

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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