研究課題
骨内微小環境下における歯原性上皮の増殖や分化に影響を与えると考えられる、細胞老化関連分子であるSIRT1について免疫組織化学的に検索した。1. 方法:エナメル上皮腫(濾胞型、叢状型)と対照の歯嚢(歯堤上皮)を対象とし、SIRT1の発現・局在について、マウスモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的染色により解析した。2. 結果:SIRT1は、正常および腫瘍性の歯原性上皮細胞の核に発現がみられた。これらの発現は、歯堤上皮に比べてエナメル上皮腫で有意に低かった。エナメル上皮腫でのSIRT1の発現は、腫瘍胞巣辺縁部の細胞で中央部の細胞に比べて、強い発現が認められた。また、扁平上皮化生を示す腫瘍細胞でのSIRT1の発現は、ほとんど認められなかった。叢状型での発現は、濾胞型での発現より強い傾向を示したが、統計学的な有意差はみられなかった。また、40歳台以上の症例では、30歳代以下の症例より、SIRT1の発現は若干高かった。3. 考察:細胞老化関連分子の発現が歯原性上皮で確認でき、骨内微小環境における歯原性上皮細胞の制御に寄与することが示唆された。SIRT1の分子の発現は、正常組織に比べ腫瘍組織で低く、また、エナメル上皮腫での局在に発現程度の差異がみられ、歯原性上皮の増殖や分化に関わる可能性が示唆された。また、SIRT1発現とエナメル上皮腫症例の年齢分布の解析より、この分子の発現が、エナメル上皮腫細胞の加齢状況と細胞動態に関与することが考えられた。
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