研究実績の概要 |
7つのヒト口腔癌細胞株とヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)をtranswellを介して共培養した結果、NHDFと共培養した口腔癌細胞株4つにおいて、WNT7Aの発現が有意に上昇するのが認められた(特に発現上昇はHO-1-N-1およびHSC-5で強く認められた)。siRNAを用いて癌細胞のWNT7A発現をノックダウンした結果、NHDF共培養により促進されるHO-1-N-1、HSC-5の運動能力および浸潤能力は有意に抑制された。また、ヒト口腔扁平上皮癌手術材料122例を用いた免疫組織化学的検討では、癌細胞におけるWNT7A発現と浸潤深さとの間に有意な相関が認められた。また、癌細胞におけるWNT7A発現の強さと癌胞巣周囲に誘導されるalpha-SMA陽性の癌関連線維芽細胞(以下、CAF)との間にも正の相関が認められた。次にWNT7Aによる口腔癌制御機構に関わる因子を探索するためにマイクロアレイにてNHDFと共培養したHSC-5で発現が変動している遺伝子を抽出した。そして抽出した遺伝子を、過去の研究論文(Cell, 2017, 171(7):1611-1624)で頭頸部扁平上皮癌のシングルセルRNAシーケンスにて解析・報告されたpartial-EMTおよび上皮分化に関連した遺伝子群と照らし合わせた結果、いくつかの候補因子が得られた。その中でもCLDN1の発現がリコンビナントヒトWNT7A添加によって有意に抑制されることを見出した。更に、siRNAによりHO-1-N-1とHSC-5のCLDN1発現を抑制すると、癌細胞の運動能力が有意に促進されること、WNT7AによるCLDN1発現抑制はAKTのリン酸化を介していることもウェスタンブロットによって示された。
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