研究課題/領域番号 |
21K09857
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宇佐美 悠 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (80444579)
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研究分担者 |
廣瀬 勝俊 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (00824898)
犬伏 俊博 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (30550941)
波多 賢二 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (80444496)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 軟骨 / 軟骨膜 / 線維芽細胞 / ケロイド / 遺伝子多発性骨軟骨腫症 |
研究実績の概要 |
本研究では、遺伝子組み換えマウスを用いて成長板軟骨と軟骨膜に存在する骨軟骨前駆細胞の解明を試みる。本年度は、本研究で使用する遺伝子組み換えマウスの作製、タモキシフェンの投与時期、投与量などの予備実験を行ない、本研究の遂行に最適な動物実験の条件を確定した。なお、マウス作製にかかる待機期間中に、本研究で注目する研究領域より派生した研究も実施したので以下に記載する。なお本研究の一部は研究協力者として米国University of Maryland School of MedicineのMotomi Enomoto-Iwamoto先生と共に行っている。 本研究で研究対象とする成長板軟骨部軟骨膜は遺伝子多発性骨軟骨腫症(Hereditary Multiple Osteochondromas、HME)に見られる骨軟骨腫の発生母地として知られている。HMEはへパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)の合成に関わる遺伝子であるExt1の異常により生じ、多発する骨軟骨腫に対して、度々、切除手術を行う必要があるが、切除後の皮膚にケロイド瘢痕が生じることが報告されていた。その原因を解明するため、線維芽細胞特異的にHMEの原因遺伝子を発現させた遺伝子組み換えマウス(HME患者皮膚モデル)を作製し、実験的に皮膚潰瘍を形成し、その治癒過程を解析することで、HME患者に生じるケロイド瘢痕の形成機序の解明を試みた。創傷治癒過程の解析により、HME患者皮膚モデルでは、創部の閉鎖が遅延すること、その閉鎖遅延には線維芽細胞のアポトーシス抑制とマクロファージの浸潤が関わっていることが明らかとなった。 この派生研究により、成長板軟骨膜部に生じる軟骨腫の形成にも軟骨細胞のアポトーシスや病変部に浸潤するマクロファージが関わっている可能性やHMEが関与しないケロイド瘢痕形成にもHSPGの異常が関わっている可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で使用する遺伝子組み換えマウスの作製にあたり、マウスの系統を揃えるための戻し交配に時間を要した。また、当初予定した週令でのタモキシフェン投与とレポーター遺伝子による軟骨細胞の標識効果の条件検討において、タモキシフェン投与時期と投与期間の最適化に関する予備実験に時間を要したため、予定した実験に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の遂行に必要な遺伝子組み換えマウスの作製は完了したため、効率的に遺伝子組み換えマウスを作成可能な交配方法を確認する。 当初計画していた通り、出生直後(生後6日)より、成長板軟骨の成長が遅くなる生後21日にかけて、タモキシフェンの投与により標識される細胞の追跡を行う。 各成長時期より、骨軟骨前駆細胞が最も活性化している時期を予測し、タモキシフェンを投与した後に免疫不全マウスに移植することで、骨軟骨前駆細胞による骨軟骨形成効果についての解析を行う。 派生研究であるケロイド研究においては、そのメカニズムに関して細胞を用いて解析し、研究成果を論文化する。 研究で得られた結果は研究協力者である米国University of Maryland School of MedicineのMotomi Enomoto-Iwamoto先生と協議し妥当性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数が余ったため、次年度分として使用する。
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