研究課題/領域番号 |
21K09858
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松尾 美樹 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (20527048)
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研究分担者 |
小松澤 均 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (90253088)
菅井 基行 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, センター長 (10201568)
LE NGUYEN・TRA・MI 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (20897904)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 薬剤耐性 / 黄色ブドウ球菌 / 口腔 / バクテリオシン |
研究実績の概要 |
令和4年度は口腔と鼻から分離した黄色ブドウ球菌についての比較解析と、また、この研究から見出した黄色ブドウ球菌に有効なバクテリオシンの精製と黄色ブドウ球菌に対する効果の検証、メカニズム解析を行った。 1つ目の研究については、1個体から分離した口腔と鼻腔から各々分離した黄色ブドウ球菌では、内在性遺伝子変異により口腔-鼻腔間で薬剤感受性が異なることが明らかになっていたことから、この感受性の違いを検討するために遺伝子発現検証を行った。その結果、細菌由来の抗菌性因子であるバクテリオシンに対するmulti resistant facterであるVraDE発現の増加を認めた。本現象をより多検体で確認するために、別プロジェクトにて口腔と鼻腔から分離した黄色ブドウ球菌について、ゲノム情報から同一箇所における遺伝子変異を検証するため、薬剤感受性試験ならびに内在性変異の有無について検証しているが、現時点では先日と同様の内在性変異は認められていない。 一方、黄色ブドウ球菌に加え、口腔と鼻腔から表皮ブドウ球菌を分離し、黄色ブドウ球菌に対する活性を検証した結果、5つの菌株で活性を認めた。新規バクテリオシンも含め、4種のバクテリオシンである可能性がゲノム解析から示唆され、そのうち2つについてはプラスミド上にバクテリオシン遺伝子領域を持つことが明らかになった。残り2種のバクテリオシンについては現在解析中である。プラスミド上にバクテリオシン遺伝子領域をもつもののうち、1つについては100株の黄色ブドウ球菌に対し抗菌活性を検証した結果、その抗菌力を大きく2つのグループに分かれた。現在この感受性の違いを生じる黄色ブドウ球菌のメカニズムについて検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者はこれまでに、黄色ブドウ球菌において、内在性変異を持つ高濃度薬剤耐性菌が存在することを明らかにしている。現在はこの内在性変異を生じる条件や市中における分布状況、また内在性変異のパターンについての検証を行なっている。 これまでに、内在性変異を持った菌株は、高濃度の薬剤に一定時間曝されることで優勢となることが明らかになっている。現在は、細菌由来の抗菌因子であるバクテリオシンやヒト由来抗菌性ペプチドに曝露される環境にいる黄色ブドウ球菌を口腔から分離し、鼻腔分離黄色ブドウ球菌を比較対象として、薬剤感受性、ゲノム解析、遺伝子解析を行なった。その結果、1個体から分離した口腔と鼻腔から各々分離したSaでは、内在性遺伝子変異により口腔-鼻腔間で薬剤感受性が異なること、全ゲノムデータを用いた系統解析から口腔-鼻腔間で遺伝子パターンが同じであるにも関わらず、一部の薬剤に対する感受性が鼻腔と口腔で異なる個体が存在すること、その株においてはABCトランスポーターの一つであるVraDEの高発現を生じていることを明らかにした。現在本研究については投稿準備中である。一方、黄色ブドウ球菌に加え、口腔と鼻腔から表皮ブドウ球菌を分離し、黄色ブドウ球菌に対する活性を検証した結果、5つの菌株で活性を認めた。新規バクテリオシンも含め、4種のバクテリオシンである可能性がゲノム解析から示唆され、そのうち2つについてはプラスミド上にバクテリオシン遺伝子領域を持つことが明らかになった。このうち1つについては、100株の黄色ブドウ球菌に対し抗菌活性を検証した結果、その抗菌力を大きく2つのグループに分かれた。
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今後の研究の推進方策 |
内在性変異株の市中の分布状況について検証するため、別プロジェクトにて口腔と鼻腔から分離した黄色ブドウ球菌200株について解析予定である。現在は別プロジェクトにてゲノム解析中であり、ゲノム情報が入手でき次第内在性変異の有無や系統解析による菌株の性状の違い、薬剤感受性検証等を行う予定である。この研究により、申請者が注目している内在性変異型高度薬剤耐性黄色ブドウ球菌が、現在市中でどのくらい、どのパターンの変異タイプが分布しているのかを検証し、それにより治療で使用する薬剤の適用についてのリスクトリアージを目指している。 また、黄色ブドウ球菌に対し抗菌活性を持つ細菌由来の抗菌性因子バクテリオシンを見出している。口腔と鼻腔から分離された表皮ブドウ球菌200株について、薬剤耐性黄色ブドウ球菌に対する活性を持つ菌株が5株見出した。現時点で1つは新規バクテリオシンであり、残り3種は既報バクテリオシンと近い構造を持つバクテリオシンである可能性がPCR解析ならびにゲノム解析から示唆された。この研究については現在、新規を含む2種については論文投稿準備中であり、残り2種のバクテリオシンについてはゲノム解析中である。今回見出されたバクテリオシンについては、新規治療薬候補として多剤耐性黄色ブドウ球菌に対する感受性検証、耐性化についての検証を行う予定である。
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