近年、自然免疫を担うマクロファージや自然リンパ球が自己免疫疾患やアレルギー発症に関与することが明らかとなり、本研究ではシェーグレン症候群(SS)の標的臓器である唾液腺に存在する自然リンパ球innate lymphoid cells (ILCs)の中でもI型自然リンパ球に分類されるNatural Killer (NK)細胞数に注目した。NK細胞は、男性よりも女性に多く、卵巣摘出等により減少するエストロゲン依存性の細胞である。多くの自己免疫疾患は女性優位に発症するが、その中でもSSは特に女性優位に発症する。NK細胞が標的臓器唾液腺で産生するIFN-gammaとTNF発現量は、CD8およびCD4陽性T細胞よりも高いことがあきらかになった。特にIFN-gammaとSS病態との関連性はヒトの病態も含め、多くの報告がある。唾液腺在住のNK細胞からのIFN-gammaが病態に、特に病態初期において重要な役割を担っていることが示唆された。さらにNK細胞の分化状態に関わるEOMES転写因子やCD11b、 CD49a、 CD49b等のNK細胞分化マーカーを検討すると、脾臓や肝臓とは異なるタイプのNK細胞が唾液腺に局在していることを明らかにした。 SS発症の唾液腺においてIL-17やIL-33の発現が高いことを確認しており、IL-17を産生するIII型ILCs、IL-33によって誘導されるII型ILCsの存在を示唆しているが、唾液腺におけるこれらの細胞数は非常に少なく、NK細胞に比較すると解析が難しく、今回は追求することができなかったが、細胞数が少なくても重要な役割を担っていると予想され、今後、発症時期やSSモデルマウスを検討することにより、解析する必要があると考えている。ILCsの存在と病態との関係が明らかになれば、SS発症メカニズム解明に寄与できると考えている。
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