研究実績の概要 |
今年度は、マウスへの感染実験で、糖の取込み機構であるホスホトランスフェラーゼシステム(PTS)の腸管への定着に及ぼす影響を解明することとした。初めに、無菌マウスおよび常在細菌叢を有するSPFマウスに対してクレブシエラ菌の安定定着条件の検討を行った。無菌マウスは、炭酸水素ナトリウムで胃酸を中和後、1×10<sup>9</sup>/100 μl経口投与することで、投与7日後の糞便1g中に2X10<sup>9</sup>CFUレベルで定着し、安定的に腸管内に定着することを確認できた。SPFマウスは、細菌の経口投与前日にストレプトマイシン20 mgを経胃投与後、アンピシリン200 μg/mlを飲用水に添加し、無菌マウスと同様に胃酸を中和後、菌を経口投与することで、投与7日後の糞便1g中に1~2X10<sup>9</sup>CFUレベルで定着し、安定的に腸管内に定着することを確認できた。 このクレブシエラ菌投与条件で、マンノースPTSが腸管への定着における競争上の優位性となるかCompetitive assay (競合的コロニー形成法)で検討した。WTおよびPTS KO株を等量混和し、マウスに経口投与後、1, 3, 7, 14日の糞便を回収し、マンノース分解能を指標とした寒天平板でWT, KO株の菌数を求め、Competitive index (CI)=ratio out(KO/WT)/ration in(KO/WT) CI<1: WT優位、CI>1:KO優位 で判定した。感染14日後にはCI=0.06となり、マンノースPTSは腸管への定着に関与することが示された。 先進ゲノム支援2021年度第2回支援課題に採択され、ノトバイオートマウスの腸管に定着したクレブシエラ菌のRNAシーケンスを行った。発現変化を解析することで、腸管の適応に必要な遺伝子や免疫調節に関わる因子が明らかとなった。
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