研究課題/領域番号 |
21K09862
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
櫻井 浩平 藤田医科大学, 医学部, 講師 (10608756)
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研究分担者 |
酒井 康弘 藤田医科大学, 医学部, 講師 (20754394)
山田 勢至 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (00566870)
林 雄一郎 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (80806464)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 転移 / 鶏卵漿尿膜移植法 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
頸部リンパ節や遠隔臓器へ転移をきたした口腔癌は予後不良となる。複雑なステップを経て成立する口腔癌の転移を解析するためには、癌進展を模倣した「癌細胞モデル」と「動物実験モデル」が必要である。本研究は癌細胞モデルとして高転移能を有する口腔癌細胞株を使用し、転移に関わる遺伝子の発現・ネットワークを解析する。また動物実験モデルとして、鶏の有精卵を用いた鶏卵漿尿膜移植法(Chorioallantoic Membrane Assay: CAM assay)を確立する。本研究は、これらの癌細胞モデルと動物実験モデルを組み合わせて口腔癌転移の治療標的分子の同定を目指す。 今年度は「高転移能を有する口腔癌細胞の遺伝子発現解析」と「CAM assayの確立」を目指した。 遺伝子発現解析として、舌癌細胞株HSC-3細胞とその高転移能株HSC-3-M3細胞のトランスクリプトームを比較解析した。この2つの細胞の発現変動遺伝子リストを用いてGene Ontology(GO)解析を行なったところ、blood vessel development、regulation of cytokine production、extracellular matrixなどのGO termが抽出された。またIngenuity Pathway AnalysisではHSC-3-M3細胞の転移を制御するpathwayや因子が予測され、これらが治療標的候補となる可能性が示唆された。 上記解析と並行して、口腔癌進展を再現するためにCAM assayの確立を試みた。孵卵10日目の有精卵に窓を開けて漿尿膜を露出し、HSC-3細胞とHSC-3-M3細胞を移植した。いずれの細胞も移植4日目には肉眼的に観察可能な腫瘍塊を形成した。病理組織学的に検索すると癌細胞が密に増殖しながら周囲組織に浸潤する像が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は年度途中で所属機関を変えたため、実験の進捗がやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
HSC-3細胞とHSC-3-M3細胞の発現変動遺伝子リストの中からをいくつか選択し、発現をRT-PCR、western blottingで確認する。またThe Cancer Genome Atlasの口腔癌症例の遺伝子発現情報と照らし合わせながら、解析対象となる遺伝子を絞り込む。それらをノックダウン、過剰発現した場合の増殖能、浸潤能を細胞培養実験で解析する。 HSC-3-M3細胞はヌードマウスの舌に移植すると、高頻度で転移することが既に知られている(Oral Oncol. 1998 Jul;34(4):253-256)。そこで本年度に確立したCAM assayで同様の結果が得られるか確認する。漿尿膜に移植して腫瘍塊を形成させた後、癌細胞がニワトリ胚の肝臓や肺に転移することをヒトAlu配列検出PCRで解析する。 今後は細胞培養実験で絞り込んだ治療標的候補分子の機能を、CAM assayによるin vivo実験で検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中で所属機関を変えたため、助成金使用の予定を変更した。現所属機関の環境に合わせた計画を立て、各研究分担者と連絡を密に取りながら適切に助成金を使用していく。
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