研究実績の概要 |
スクレロスチンをWntシグナルの阻害分子として位置付けた場合、がん細胞に対してスクレロスチンが何らかの作用を示すとすると、少なくともがん細胞はWntに対する反応性を有していることが必要である。研究計画初年度である2021年度は、実験の大前提となるこの点を明確にするために、以下のin vitro実験を行った。なお、がん細胞としては、これまでにマウスへの移植実験で骨転移能を有することが確認されている株細胞(=骨転移がん細胞株)、4T1, E0771, EMT6(以上、マウス乳がん細胞)、3LL(マウス肺がん細胞)、MDA-MB-231, MCF-7(ヒト乳がん細胞)、A375(ヒトメラノーマ細胞)、A549, SBC5, HARA-B(以上、ヒト肺がん細胞)、PC-3(ヒト前立腺がん細胞)等を用いた。 1. がん細胞の古典的Wntに対する活性化解析:古典的Wntシグナルを活性化することが知られている代表的なリガンドであるWnt3aに対するがん細胞の反応性について、古典的Wntシグナルの代表的な転写産物の一つであるAxin2の発現変化についてreal-time PCRにより検討した。その結果、著明な反応性を示すがん細胞がある一方、全く反応性を示さない細胞も存在し、Wnt3aに対する反応性はがん細胞間で大きく異なることが示された。 2. 古典的Wntシグナルに関わる受容体とリガンドの発現:がん細胞における古典的Wntシグナル受容体(LRP5, LRP6)、古典的Wntリガンド(Wnt1, Wnt3a)、そしてスクレロスチンをコードするSOSTの発現をRT-PCRにて検討した。受容体とリガンドについては、いずれの細胞においても発現レベルは異なるものの発現が認められた。一方、SOSTはいずれの細胞においても発現が認められなかった。
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