研究課題/領域番号 |
21K09863
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
平賀 徹 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70322170)
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研究分担者 |
小出 雅則 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (10367617)
山下 照仁 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (90302893)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | がん転移 / Wntシグナル / スクレロスチン |
研究実績の概要 |
昨年度は、①骨転移がん細胞の多くが古典的Wntリガンドに対する受容体を発現すること、にもかかわらず②リガンドに対する反応性はがん細胞間で大きく異なること、が示された。本年度はこの結果とスクレロスチンの骨転移に対する作用の関連性についてマウス骨転移モデルを用いて検討した。また、骨転移の特異性を明らかにするために、原発腫瘍に対する作用についても併せて検討した。なお、がん細胞は臨床的に骨転移の頻度の高い乳がん細胞に限定して行った。 1.マウス乳がん細胞(E0771/Bone)+スクレロスチン欠損マウス:スクレロスチン欠損マウスの背景がC57BL/6であるため、同系統由来の細胞株E0771/Boneを用い、移植実験を行った。しかし、野生型マウスとの比較で骨転移形成に有意な差は認められなかった。原発腫瘍の増殖にも差はみられなかった。 2.マウス乳がん細胞(4T1)+抗スクレロスチン抗体:マウス乳がん細胞株4T1をBALB/cマウスに移植し、抗スクレロスチン抗体の作用を検討したが、骨転移形成に対して有意な効果は認められなかった。原発腫瘍の増殖に対しても同様であった。なお、本実験ではヒト化抗スクレロスチン抗体romosozumabを用いた。 3.ヒト乳がん細胞(MDA-MB-231)+抗スクレロスチン抗体:ヒト乳がん細胞株MDA-MB-231をヌードマウスに移植し、抗スクレロスチン抗体の作用を検討した。その結果、①②の実験とは異なり、抗スクレロスチン抗体は骨転移を有意に増加した。一方、原発腫瘍の増殖に対しては同様の作用は認められなかった。 以上の実験で用いた3種類の乳がん細胞のうち、昨年度の検討で古典的Wntリガンドに対して反応性を示したのはMDA-MB-231細胞のみであったことから、抗スクレロスチン抗体が古典的Wntリガンド反応性がん細胞の骨転移を促進する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の目的であった「がん細胞の古典的Wntリガンドに対する反応性の差異」と「スクレロスチンの骨転移に対する作用」の関連性について、スクレロスチン欠損マウスおよび抗スクレロスチン抗体を用いた動物実験により明らかにすることができたことから、計画の目標はほぼ達成されたと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は抗スクレロスチン抗体が古典的Wntリガンド反応性がん細胞の骨転移を促進したメカニズムを解明するために、①古典的Wntリガンドのがん細胞の増殖、遊走、浸潤に対する作用のin vitro実験、②骨転移標本を用いた微小環境の組織学的比較、を行う。また、がん細胞によるスクレロスチンの発現制御の可能性についてもin vitro、in vivoでの解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、ほぼ予定通りに実験を行い、必要な消耗品の購入を中心とした支出を行ったが、割引等のため端数程度の繰越金が生じた。次年度の研究に必要な消耗品の購入に充てる予定である。
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