令和5年度は、令和3年度および4年度に得られた成果をもとに、クロルヘキシジン耐性Enterococcus faecalis ATCC29212株を新たに作成し、RNAシークエンスによりクロルヘキシジン耐性株の遺伝子発現の変化を再度検討することにした。 具体的には、クロルヘキシジン耐性株および野生株から抽出したトータルRNAサンプルから、rRNA除去法によりストランド特異的cDNAライブラリを調整し、Illumina NovaSeq 6000を用いて1サンプルあたり1400-1800万の150 bpペアエンドシーケンスリードを取得した。これらのPE FASTQファイルをさらにTrimmomaticを用いてトリミングした後、HISAT2によるシーケンスリードのマッピングを行い、featureCountsによる遺伝子ごとのリードカウントを経て、DESeq2による発現変動遺伝子の解析を行った。 遺伝子オントロジー解析の結果、クロルヘキシジン耐性株はchromosome segregation、cellular component organization、およびdisaccharide metabolic process(以上、Biological Process:BP)、proteasome complex、HslUV protease complex、およびcytosolic proteasome complex(以上、Cellular Component:CC)、ion bindingおよびdrug bindingでアノテーションされた遺伝子の発現上昇が認められた。その中で、野生株と比べて5倍以上の発現上昇が認められた7種の遺伝子のうち、5種が薬剤輸送タンパクであるATP結合カセットトランスポーターに関連する遺伝子であることが明らかとなった。
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