研究課題/領域番号 |
21K09873
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清水 真人 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (70380277)
|
研究分担者 |
上垣 浩一 近畿大学, 農学部, 教授 (00356544)
野崎 剛徳 大阪大学, 歯学部附属病院, 准教授 (30263304)
三浦 治郎 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (70437383)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 糖化最終産物AGEs / 架橋型AGEs / RAGE/AGEsシグナル / コラーゲン / 象牙質 / HPLC解析 / 質量イメージング解析 / アラゲブリウム |
研究実績の概要 |
糖は生体にとってエネルギー源として重要であるが、活性の高いアルデヒド基を有しており、無酵素、無加熱の生理学的条件下でタンパク質中アミノ基と反応し、シッフ塩基、アマドリ転位、酸化反応を経て不可逆的に糖化最終産物(Advanced Glycation End products: AGEs)を形成してしまう。AGEsは結合したタンパク質とともに代謝されない限り、生体に蓄積する。 加齢に伴う動脈硬化、生体内の異所性石灰化、β‐アミロイド中への蓄積、骨代謝においてはコラーゲンが変質することによる骨の脆弱化。また後縦靭帯骨化症などの難病疾患にも関与していると考えられている。またAGEsはRAGE(Receptor for AGEs)との相互作用を介して様々な生体シグナルを発していると考えられている。 これまで免疫染色法、免疫電子顕微鏡やウェスタンブロット、蛍光寿命測定でAGEsの分布状態を解析してきた。またタンパク質を酸でアミノ酸レベルにまで完全分解してAGEsを逆相カラムで分離しAGEsの存在をHPLC解析や質量分析など物理化学手的な解析進めてきた。これらの多面的な解析により高齢者、糖尿病の患者の象牙質中にAGEsが蓄積していること、う蝕表面がAGEs化されるとう蝕の進行が抑制傾向にあることなどを見出してきた。また糖尿病モデルラットの臼歯のAGEs蓄積を質量イメージングで捉えることができた。また糖尿病モデルラットを用いることでラットの臼歯部にヒトの糖尿病患者に多く見出される歯髄内結石が増加することも捉えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AGEsによる歯髄内などでの異所性石灰化のメカニズムを調べるためAGEs受容体(RAGE)精製と相互作用の解析を試みている。ラット肺に発現しているsRAGEの粗精製ができた。質量分析、質量イメージングによってRAGE,AGEsの分布を凍結乾燥切片を使用することでとらえることに成功した。 AGEsまたRAGE阻害薬をラットの投与することで歯髄内異所性石灰化へ影響の評価を試みており糖尿病モデルラットでは歯髄内結石が顕著に増加することを見出した。コラーゲンは糖化によって強固な架橋構造を作り骨の正常な代謝を妨げたり、動脈硬化の原因となっている。この架橋構造を阻害、分解する薬物としてアラゲブリウムが知られている。in vitroの糖化反応においてアラゲリビウムを共存させると架橋反応が阻害されることを確認した。またあらかじめ糖化反応を行い架橋構造が形成を確認したコラーゲンにアラゲブリウムを添加すると架橋産物が減少することを見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
RAGEを介したAGEsのシグナル伝達の機構をラットにRAGE阻害剤を投与するなどin vivoでの解析も進める。アラゲブリウムが直接架橋型AGEsに作用しているのかあるいは架橋中間体をターゲットに切断反応を促進しているのか、ウエスタンブロット、HPLC、質量分析により解析中を進め、アラゲブリウムの作用機序を解明する。アラゲブリウムはヒトに対しては治験第3相まで進んだ薬剤であったが腎障害が出たため現在ヒトへの使用は禁止されている。作用機序の解明は類似の薬物開発の一助となると考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究にあたって解析に用いる液体クロマトグラフィーカラムなどの耐用時間が予想以上に長期に使用でき、購入が不要だったこと。超高分解質量分析装置の使用を計画していたが、装置メンテナンスにあたって新型コロナによってエンジニアの来日が困難になり使用が困難だったこと。また旅費は共同研究先および学会等の移動がこれもまた新型コロナ感染拡大により困難であったため次年度使用せざるを得なくなった。次年度より研究所間の移動、学会の対面参加等が可能になれば旅費を使用することとなる。また超高分解能質量分析装置の使用料も発生する。糖化反応による病態のメカニズム解析にとどまらず、糖化反応を阻害、あるいは生体に蓄積したAGEsを除去、解消する方法の開発にまで研究を進めていくため次年度に予算を使用する。
|