研究課題/領域番号 |
21K09880
|
研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
鈴木 雅也 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (10409237)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | CAD/CAMブロック / 歯科用レーザー / 被着面処理 / 接着強さ |
研究実績の概要 |
令和4年度は、昨年度に引き続きレーザー表面処理後のCAD/CAMレジンブロックの接着強さについて評価した。CAD/CAMレジンブロック(セラスマート300、GC、以下C3)のレジンセメントに対する引張接着強さを測定した結果、Er:YAGレーザー(アーウィンアドベールEVO、モリタ、以下ER)の単独処理では対照群と同等か低下を示した。そこで、ER後にサンドブラスト(SB)を併用した結果、初期接着強さは統計学的優位に上昇した。また、表面粗さ(Ra)はSBのみ:1.46、ERのみ(100mJx10PPS):3.28、ER+SB:2.98となり、ERでRaは増大した。しかしながら、同じ方法で作製した試料を温度負荷(サーマルサイクル)試験にかけると、SBのみに比較してERで低下することが判明した。 そこで、レーザーの熱による変性の影響を排除するため、レーザーの波長を半導体(波長810nm、P2 Dental Laser System、ピオンレーザーテクノロジー)へと変更し、シランカップリング剤の活性化を目的として応用した。3種類のCAD/CAMブロック、C3、エナミック(VITA、以下EM)、ポーセレン(VITA、以下PO)に対するコンポジットレジンの接着強さを測定した結果、C3では対照群:16.8(MPa)、7W:20.5、5W:16.6、3W:16.8で、対照群と比較して統計学的優位に接着強さの上昇を認めた。また、EMでは対照群:16.2、7W:19.0、5W:17.7、3W:16.9であり、有意差はないものの上昇を認めた。この接着強さの上昇は、レーザーの照射エネルギーが大きいほど高い傾向がみられた。POでは、照射前後ともに凝集破壊を示しており、接着強さはほぼ同等であった。 今後は、接着耐久性の評価と作用メカニズムについて解析を行い、臨床応用可能な照射条件について検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予備実験にて、レーザー照射の併用がCAD/CAMブロックの初期接着強さを上昇させることを確認しており、本実験でもほぼ予想に近い結果が得られている。しかしながら、温度負荷(サーマルサイクル)を与えると接着強さが低下することが判明した。照射設定・条件を増やして計測を行ってみたが、接着強さを維持できる結果を得ることができなかったため、レーザーの波長について再検討を行う必要となり、その選定に時間を要した。その後、いくつかの予備実験を繰り返した結果、本実験にて接着強さを上昇できる方法の見通しがつき、現在は臨床により近い手技で行えるように改善を進めている。また、その他の業務(教育、診療など)に費やす時間が多くなり、当初の予定に比較してやや遅延している。しかし、研究内容に大きな変更はなく、令和5年度の研究の遂行に支障はない。
|
今後の研究の推進方策 |
シランカップリング処理後の被着面に半導体レーザー照射を併用することにより、いくつかの材質のCAD/CAMブロックではコンポジットレジンの初期接着強さが向上した。しかしながら、依然として耐久性については今後の検討課題として残っており、特に温度負荷(サーマルサイクル)を与えた際の接着強さについて評価を行う。さらに、接着メカニズムを解明するため、試料表面のヌープ硬さの測定、表面粗さの測定、接触角の測定、SEM観察、およびレーザー照射による温度上昇の測定とその影響についても順次検討を進める。 得られたデータはそれぞれ適切な統計学的解析を行い、学会発表および専門国際学術雑誌への投稿を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由:進捗状況に記述したように、予備実験に想定よりも長い時間を費やすこととなり、やや実験の進行に遅れが生じた。そのため、器材の購入時期も予定よりも遅れることとなり、次年度使用額が生じた。 使用計画:現在のところ本実験は順調に進んでいるため、研究の完遂のため、必要となる器具・器材を順次購入する予定である。
|