研究実績の概要 |
妊娠前には、明らかな歯肉炎が見られなかった患者でも、妊娠中には、約8割の患者で歯ブラシによるブラッシング時に歯肉から出血するとの回答があった。主に出血する部位は、歯の叢生が見られる歯間乳頭からであり、妊娠中期から後期にかけてその頻度は増加していた。 歯肉の炎症が認められた妊娠中の患者において、歯肉の炎症部位と炎症が無い部位から、滅菌したペーパーポイントを用い、細菌の抽出を行った。検体より、DNA抽出後、16s rRNA V2,3,4,6,7,8,9領域配列をシークエンサにより読み取り、解析を行った。 その結果、同一患者において、炎症部位と炎症が無い部位で検出された細菌の種類や比率を調べると、Red Complexと呼ばれる特に歯周病の原因とされる菌群については、ほぼ検出される細菌の比率に変化はなかった。しかし、他の細菌については、炎症部位と炎症が無い部位では、同一患者であるにもかかわらず、大きな変化が認められる細菌が多数認められた。具体的には、Fusobacterium nucleatumについては炎症部位での細菌比率は炎症が無い部位と比較しておよそ100倍、Campylobacter concisusuやPrevotella nigrescensではおよそ50倍、Actinomyces naeslundiiやEikenella corrodensではおよそ20倍と大きく増加していた。従来から、妊娠関連歯肉炎との関連が言われているPrevotella intermediaについては、本研究においては、炎症が無い部位でほとんど検出されていない場合、炎症部位でも、その検出量および検出比率は低かった。しかし、同属のPrevotella loescheliについては、炎症部位において検出比率はおよそ10倍に増加していた。
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