研究実績の概要 |
妊娠中の約8割の患者さんでブラッシング時に歯肉から出血するとの回答があった。主に出血する部位は、歯の叢生が見られる歯間乳頭からであり、妊娠中期から後期にかけて、その頻度は増加していた。また、プロービング時の出血量は、通常と比較して多く、歯肉の炎症を伴う仮性ポケット形成が認められた。このように、ブラッシングし難い部位において歯肉炎発症の頻度が高くなることから、ポケット内の細菌叢の変化が妊娠関連歯肉炎の重要な因子の1つになると考えられる。また、それらの変化は、妊娠によって起こる宿主側の身体の変化も大きな影響を受けていると考えられる。 妊娠関連歯肉炎と一般的な歯肉炎との違いについては、まだ、不明な部分が多く、歯肉炎の悪化による母体や胎児への悪影響を考えると、妊娠関連歯肉炎の発症メカニズムの解明が必要である。 本研究では、歯肉に炎症が認められた妊娠中の患者において、炎症が無い部位と歯肉炎の部位それぞれから、ペーパーポイントを用い、歯周ポケット内から細菌の抽出を行った。DNA抽出後、16SrRNA V2,3,4,6,7,8,9領域の配列をシークエンサーにより読み取り、それぞれのポケット内に存在する細菌の種類、数および構成比の比較を行い、妊娠関連歯肉炎の原因菌の特定につなげる。さらに、妊婦の遺伝子発現解析から、妊娠中に口腔内に影響を及ぼす変化を明らかにする。 まずは、既存のデータを公共データベースより収集し、遺伝子発現解析を行い、さらに、PubMedなどを用いた文献の自然言語処理による情報をバイオインフォマティクスの手法を用いて集約し、妊娠関連歯肉炎に関連する遺伝子発現やホルモン変化について検討を進めている。
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