研究実績の概要 |
本研究は、齲蝕にさらされた象牙質・歯髄複合体の創傷治癒におけるプロテアーゼを起点とした機序を解明することで、歯髄保存療法へ応用可能な新規標的分子の同定と機能解析を行い創薬への展開を目的としている。これまでの研究から、齲蝕歯の象牙芽細胞様細胞および修復象牙質において発現が亢進するbone morphogenetic protein (BMP)-1がglucosylceramidase (GCase)を標的とすることを明らかにしている。 今年度は、前年度に確立したヒト歯髄培養細胞(hDPCs)におけるGCaseノックダウン系を用いて解析を行った。 以前の研究から、BMP-1はCellular communication network factor (CCN) 2の発現を調節することを明らかにしているがその詳細な機序は不明であった(Muromachi et al., 2015)。siGCaseをhDPCsにトランスフェクションし解析を行ったところ、BMP-1刺激によるCCN2 mRNA発現はGCaseノックダウンによって抑制された。なお、siGCaseはCCN2発現のベースラインに影響を及ぼさないことから、CCN2発現におけるGCaseの働きはBMP-1特異的であると考えられた。 また、前々年度に明らかにしたBMP-1によるGCaseの核移行はimportazoleによって抑制されることを共焦点レーザー顕微鏡を用いた解析で明らかにした。加えて、BMP-1刺激によるCCN2 mRNA発現はimportazoleによって抑制された。 以上の結果から、hDPCsにおいてBMP-1によりGCaseはimportin-βを介した核内輸送経路によって核移行しCCN2のmRNA発現を調節すると考えられた。
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