感覚神経の神経伝達物質であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は自然免疫応答を抗炎症的に制御し免疫担当細胞や脂肪細胞から産生されることが明らかになっている。CGRPは、炎症歯髄組織中のC線維から放出されており、健康な歯髄と比較して有意に発現が認められているが、歯髄組織でもCGRPを介した制御システムにより、マクロファージを介した組織再生が期待できると考えられ、これを局所に効率的に行うことで、歯髄炎の回復及び歯髄界面に修復象牙質形成を促進することが可能になると推測された。本研究では、外的侵襲後の歯髄修復過程における神経ペプチドの役割を解明し、歯髄修復過程における神経ペプチド、マクロファージの活性化、歯髄幹細胞/前駆細胞増殖・分化と象牙質再生機構の解明を目的とした。8週齢のWistarラットに実験的に歯髄損傷を発症させ、窩洞形成直後、1日、3日、5日、1週、2週後にラットを深麻酔下にて灌流固定し、被験歯を顎骨ごと摘出して脱灰後、厚さ4μmのパラフィン切片を作製した。HE染色による組織学的観察を行い、nestin染色で象牙芽細胞、抗Ki67抗体にて細胞増殖活性を、さらに神経線維、M1・M2マクロファージ、樹状細胞の動態、CGRP発現パターンの解析は、PGP9.5、CGRP抗体を用いて行った。CGRPがヘルパーT(Th)細胞やマクロファージに発現するCGRP受容体を介するとTh17細胞を活性化させ、マクロファージをM2型へと分化させることが示唆された。
|