研究課題/領域番号 |
21K09885
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
吉成 伸夫 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (20231699)
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研究分担者 |
宇田川 信之 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70245801)
田口 明 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70243582)
石原 裕一 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), 研究部研究開発室, 研究開発室長 (50261011)
尾崎 友輝 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (10802902)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 抗老化細胞療法 / 歯周病 / 糖尿病 / 動脈硬化症 / 慢性炎症 |
研究実績の概要 |
近年,歯周炎(P),糖尿病(DM),心臓血管疾患(CVD)等の生活習慣病に共通した病因として老化が注目されている.老化状態では,慢性炎症所見が多数観察される.この慢性炎症発症機序には,老化細胞が細胞老化随伴分泌現象(SASP)を誘導することで発症する.そこで本研究では,加齢マウスを使用し実験的P,DM,CVDに対して老化細胞除去を試み,各疾患の病態改善効果を観察した. C57BL6マウス39匹と動脈硬化症自然発症モデルであるApoE(-/-)マウス36匹を実験に供した.これらをコントロール(C),P,DM,CVD,P+DM,P+CVD,P+DM+CVDの7群に群分けし,さらにC群を除く6群に対し,老化細胞除去薬投与群: 6匹と非投与群: 6匹を設定,計13群に群分けし,72週(1年6ヶ月)齢まで飼育した.P群では70週齢時に上顎臼歯に絹糸を結紮し,実験的歯周炎を誘導,DM群は6週齢時にストレプトゾトシンとニコチンアミドを投与し,2型糖尿病を誘導, CVD群はApoE(-/-)マウスを適用した.老化細胞除去群には,ダサチニブとケルセチン溶液を56週齢時に2週間隔で4回経口投与した.すべての動物は,72週齢で安楽死させ,μ-CT撮影を行い,歯槽骨吸収量を計測してPの病態評価とした.また,DMの状態は毎月の空腹時血糖値にて評価した.動脈硬化は大動脈内腔の脂肪沈着率を計測して評価した. 歯周組織のμ-CT解析では老化細胞除去薬投与によりDM群,P+DM群,P+DM+CVD群内で歯槽骨吸収量が有意に減少した.DM群では薬剤投与による血糖値の変動はなかった.大動脈の脂肪沈着率では,薬剤投与によりP+DM+CVD群で有意な脂肪沈着の減少がみられた.これらの結果より,P+DM+CVD群では老化細胞除去薬投与による病態改善傾向が確認でき,老化細胞除去効果を研究するモデルになりうると思われた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,以下の事象について対処している. 72週齢までに75匹中,約32%にあたる24匹が死亡した.老化による衰弱死以外に死亡したマウスは,DM誘導時の急激な血糖値上昇による死亡が,約30%(8匹)であった. また,歯周病は上顎臼歯に絹歯結紮により誘導(P群),2型糖尿病は,streptozotocinおよび,nicotinamideを腹腔内投与し誘導(DM群),自然発症的に動脈硬化症を発症するApoE-/-マウスを動脈硬化症(CVD)群とするが、絹歯結紮直後のはずれや6週齢時にstreptozotocin(STZ, 100mg/kg)および,nicotinamide(NA,240mg/kg)を2日間隔で2回腹腔内投与し誘導した糖尿病の随時血糖値の程度のばらつきが大きく、それらの実験術式が一定化するのに時間がかかった。 しかし,死亡したマウスの不足分を現在補充して実験しており,あと1年で時間的ロスは取り返せると思う.
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今後の研究の推進方策 |
今後,追加動物を72週(1年6ヶ月)齢時に安楽死させ,各群3匹の歯周組織,膵臓,大動脈のパラフィン包埋切片を作製,p16,SA-β-galを染色し,老化細胞の局在,数を特定する。 残りのマウスは前述部位をホモジナイズし,老化マーカー,SASP因子をreal-time PCR法,ELISA法にて検出する。各疾患の病態程度の評価として,歯周病はμ-CT解析による歯槽骨吸収量の計測,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,骨関連マーカー(ALP,TRAP)の発現を免疫組織化学的染色にて組織学的に評価する。 糖尿病は,毎月の空腹時血糖値測定にて評価,動脈硬化症は,屠殺後,大動脈内腔のSudanⅣ染色による脂肪沈着を測定(En Face解析)することにより評価する。老化の病態程度の評価としては,歯周炎誘発部位,膵臓,動脈硬化病変部位のp16遺伝子発現,SA-β-gal活性を組織学的に,老化マーカー(p16,p21,p53),SASP因子(IL-6,IL-8,MCP-1,PAI-1,MMP)のmRNA発現を先述の局所,および血清中でreal-time PCR法,タンパクをELISA法にて検出する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
追加動物実験の継続と,学会発表出張費,論文掲載料に充てるため。
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